No.1165
2026.07.22
次世代の宇宙輸送方式によるハイブリッドロケット打上げミッション
サブオービタルミッション

概要
「サブオービタルミッション」とは、気球でロケットを成層圏まで運んでから点火・発射するRockoon方式でのハイブリッドロケット打上げにより、宇宙空間(高度100km以上)への到達を目指す実験。日本の宇宙スタートアップ企業であるAstroX株式会社によるもので、このミッションでは宇宙空間到達に加え、ペイロードの輸送サービスも提供する。民間として世界初の宇宙空間到達を実現することを目標とし、2026年度中の実施が予定されている。ロケットは、2024年11月に打上げ実験を実施した「FOX1ロケット」の後継機「FOX2ロケット」が使用され、2029年のRockoonでの衛星軌道投入、2030年代頭からの商用化、高頻度の衛星打上げ事業に向けた重要なステップとなる。
なぜできるのか?
気球でロケットを成層圏まで運んでから点火、発射するRockoon方式
「Rockoon」は、気球でロケットを成層圏に運び、空中で発射するという次世代の宇宙輸送方式で、地上・成層圏・成層圏〜宇宙空間という3つの高度環境を一つのミッションで行き来できる唯一の輸送プラットフォームとなる。ロケットが宇宙空間に到達するだけでなく、気球が成層圏を飛翔する道中でもペイロードを搭載・運用できるため、科学観測・実証実験・センサ試験・学生教育など、多様な用途に対応することが可能。このアプローチによって、宇宙へのアクセスは柔軟かつ低コストになるとされており、同社はこの技術で宇宙利用の民主化を推し進めていくとしている。このミッションの初号機には、最初のペイロード顧客として高知工科大学インフラサウンド研究室(山本真行教授)が参画する。初号機の段階でペイロード顧客が確定したことは、「Rockoon」が切り拓く新しい宇宙輸送への市場の期待が示されている。AstroXの調べ(2026年5月)によると、「Rockoon方式での宇宙空間(高度100km以上)到達」という括りにおいて、民間企業・団体が達成した事例は確認されておらず、同社は民間世界初のRockoon方式による宇宙空間到達を目指すとしている。
新型ロケット「FOX2」を使用した宇宙ミッション
FOX2ロケットは、全長約5m、Dry重量126kg、エンジン推力は最大12kNのロケット。2024年11月に打上げ実験を実施したFOX1ロケット(全長約6.3m・Dry重量約176kg)の成果と課題を踏まえて開発された後継機で、今回のミッションに使用される。このロケットの最大の進化点は発射方式と推進系にあり、FOX1ロケットが地上から発射したのに対し、FOX2ロケットは気球により成層圏まで運ばれてから点火する。大気の薄い成層圏からの発射により空気抵抗を大幅に低減し、従来の地上発射と比べて省燃料で宇宙空間への到達を可能にしている。推進系では、2025年に燃焼試験に成功した成層圏仕様の点火装置を搭載。燃料には従来比3〜4倍の燃焼速度を持ち、機械的物性に優れた低融点熱可塑性樹脂(LT)を採用し、サブオービタル機としての要求推力を達成した。さらに、今後オービタルに向けてハイブリッドロケットの大型化も見込まれている。またFOX1ロケット発射実験の学びから、到達高度を確実なものにするため「酸化剤圧力のコントロール技術」を事前の気球放球により実証し、さらに空気の薄い成層圏でも安定した飛翔を実現可能なスピン安定方式を採用している。
日本の宇宙スタートアップ企業AstroXによる実験
AstroX株式会社は、2022年5月20日に創業し、福島県南相馬市に本社を構える日本の宇宙スタートアップ企業。「宇宙開発で “Japan as No. 1” を取り戻す」をビジョンに掲げ、Rockoon方式による宇宙輸送サービスの開発を進め、高高度気球でロケットを成層圏まで輸送し空中発射することで、従来より効率的で柔軟な宇宙輸送の実現を目指している。同社は、2022年5月にシードラウンドで5,000万円を調達、2023年に、気球からの方位角制御下でのロケット空中発射に世界で初めて成功した。2024年にSeriesPreAラウンドで4億円を調達や高度10km級のハイブリッドロケット(FOX1)打上げを南相馬で実施。2026年にはSeriesAラウンド合計で23.2億円を調達、姿勢制御装置の超小型ロケット空中発射試験を経て統合試験フェーズへ移行し、今回のミッションとFOX2ロケットを発表した。
スポンサーシッププログラム「AstroX Rockoon Challenge」を始動
AstroXは宇宙開発への挑戦を共に担うパートナー企業と連携するスポンサーシッププログラム「AstroX Rockoon Challenge」を始動。第一弾のプラチナスポンサーとして、プリント配線板の製造・販売で国内トップクラスの実績を持つ日本シイエムケイ株式会社(CMK)が参画する。CMKは高い信頼性が求められる電子機器基板の分野で培った技術力を背景に、宇宙領域への事業展開を見据え、AstroXのミッションを支えるパートナーとして共に宇宙を目指す。
2026年度中のミッション実現に向けた段階的な実験計画
2026年度中のミッション実現に向け、段階的な実験を計画している。第1〜第2四半期にまずはこれまでで最大規模となる550kgの大型気球の係留実験を実施、次にAstroXとして初めて大気球を成層圏まで到達させる40kg放球実験、100kg放球実験では成層圏環境での初の点火実験を行う。最後に本番に近い規模となる750kgの大型気球を放球し、成層圏到達を実証する。一連の実験を経て、第3〜第4四半期では、Rockoon方式によるハイブリッドロケットの打上げを実施し、民間世界初となるRockoon方式による宇宙空間(高度100km以上)への到達を目指す。
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この知財の情報・出典
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Top Image : © AstroX 株式会社

