No.853
2024.06.07
自然と調和する全長170km・高さ500mの垂直型未来都市
THE LINE
概要
「THE LINE」とは、全長170km・高さ500m・幅200mの階層建築に都市機能を集約した垂直型未来都市。住居や仕事場、学校、公園やインフラ設備を垂直に収めており、上下横の移動でシームレスにアクセスできる。水平方向に広がる従来の都市開発は、土地開拓・都市化に伴う環境課題や人口過密・渋滞などの生活課題に直面しているため、それを解消する新たな都市として開発が始められた。100%再生エネルギーで稼働し、年中快適な気候空間を提供可能で、自然と調和する未来都市のあり方を具現化すると期待されている。
なぜできるのか?
巨大スマートシティ構想「NEOM」
サウジアラビア北西部、紅海沿岸の砂漠地帯に建設予定の巨大スマートシティ「NEOM」の構成要素として設計された。「NEOM」は2017年から開始したプロジェクトで、総面積は26,500㎢。海岸・山・砂漠をまたがるエリアで、持続可能な未来のモデルシティとして展開する。「THE LINE」は、主に住居やオフィスなど暮らしを担う都市として建設。その敷地面積は約34㎢に及ぶ。2026年から稼働を開始し、最終的に900万人が住める状態まで拡張する。「NEOM」ではそのほか、クリーンな産業都市「OXAGON」や山岳地を活かしたリゾート施設「TROJENA」の建設も進めている。
階層構造の都市設計と機能集約した垂直モジュール
住居やオフィス、学校、公園、スタジアム、公共施設や歩道など、あらゆる都市機能を階層化する、新しい都市を設計している。その設計をベースに、最大8万人を収容でき、徒歩5分以内の近隣で生活機能に到達可能な垂直型のモジュールを構築。段階的に敷地内に組み込む構想を立てている。内部では上・下・横の3次元で移動が可能。通勤・通学などに時間が取られず、自動車所有も不要になる。渋滞によるストレスや時間のロス、排気ガスによる環境汚染がなくなり、余暇時間や可処分所得の増加につながる。
環境と人に優しいインフラ
風力、太陽光、グリーン水素などの再生可能エネルギーを用い、水も再生して供給。自動車などの炭素集約的なインフラを排除し、CO2の排出量をゼロにして、環境に優しい都市を構築する。また、アクセシビリティの高い都市機能に加え、端から端まで20分で移動可能な公共の交通ネットワークも提供し、人々の交流を促進。さらに、AIを用いた自律的なサービスやテクノロジーによる計画物流で、日常生活の利便性や快適性も高める。
自然を取り入れた快適な空間
住まいとその周辺の空間を快適にデザインする、マイクロクライメイト(微気候)空間を取り入れており、一年中温暖な気候を提供する。日光や日影の最適なバランスを考え、鏡張りの建物表面から自然光を取り込んで、季節で異なる太陽の軌道を最大限に生かすよう科学的に設計。空気は、上部からの空気の流れを活かして自然換気し、風や塵などの問題はブレードで防ぐ。内部の各階層には緑化したオープンスペースを設置しており、2分ほど歩けば、自然に触れることが可能。植物や空、周辺の風景などを眺めることができる。
自然を優先する開発スタンス
垂直型の都市設計により、建設エリアの95%は手を加えないため、都市化による影響を最小限に抑えられる。また、未開拓の土地に構造物を建設する影響を考え、ミラーガラスを用いた外観を採用。周囲の大地を映して、風景に溶け込む仕様にしている。鏡張り部分には、ソーラーパネルを組み込んで発電することも想定している。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © NEOM