No.854

2024.06.07

海と共生し生態系を強化する海洋再生プロジェクト

Dubai Reefs

Dubai

概要

「Dubai Reefs」とは、海と共生し生態系を強化する海洋再生プロジェクト。海洋研究所・教育施設・住宅などの浮体式建築と、200平方キロメートルに及ぶ人工リーフ(礁)を設置して、生態系を保護・強化しながら、海と共生できる都市の構築を目指している。環境負荷を抑えるため、100%再生可能エネルギーで電力を供給し、牡蠣などの海洋養殖で食料を確保しながら、同時に水質改善を図る。エンタメ施設の設置やエコツーリズムなどの展開も想定しており、海洋環境の保護と経済を両立する、新たな都市の指針になると期待されている。

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なぜできるのか?

人工リーフによる沿岸生態系の保護・強化

世界最大級となる200平方キロメートルの人工リーフを構築。10億個以上のサンゴと、1億本以上のマングローブの木の生息地として整備する。過去数十年の石油採掘や埋立事業などで、沿岸の生態系に影響を及ぼしてきたとして、その再生を目指す。特にサンゴ礁は、水の濾過や水中生物の繁殖、海岸線の浸食防止など、環境保護に重要な役割を果たすため、人工リーフでサンゴの生態系を強化する。併せて、陸上の植物よりも多くの二酸化炭素(CO2)を吸収できる、マングローブや海藻などの沿岸の生態系を促成。海岸線の保護や大気中のCO2削減につなげる。

海洋再生の中核を担う海洋研究所

海洋再生の中核施設として海洋研究所を設置し、ドバイ沿岸の生態系保護・強化に取り組む。研究所では、海洋学者や気候科学者、次世代の海洋生物学者、海洋農家などに施設を提供。まずは、海中の5兆2,500億個に及ぶプラスチックごみの除去につながる、世界的な海洋浄化活動の主導を目指している。また研究所では、3Dプリンターによる人工リーフの建設なども想定。さらに、細胞や組織を作り出すバイオプリンティングも研究分野とし、サンゴに似た微細藻類を構築する生体材料の開発も予定している。

環境に優しい複数の発電手法

「Dubai Reefs」は、太陽光発電、水力発電、波力発電による100% 再生可能エネルギーで運営する。特に、海洋で24時間365日動きのある波のエネルギーに着目。環境に優しく、CO2を排出しない波力で、持続的な電力確保を目指している。また、海洋養殖などを行う浮体構造物には、水中の潮流を捉えて発電するタービンを搭載。養殖設備など電力供給に用いる。

再生型海洋養殖による食料供給

海面の浮体構造物に、海藻や牡蠣・ホタテ・ムール貝などの貝類を吊るして海の生態系を再現し、環境負荷の低い海洋養殖を行う。海藻の養殖により海中のCO2吸収を促して、海の酸性化の軽減も目指す。また牡蠣は、1個で50ガロン(約189.3リットル)/日の水をろ過牡蠣できるため、食料確保と同時に水質改善につなげる。海洋都市では、海洋養殖で得た水産物を主な栄養源にして、CO2を多く排出する陸上のタンパク質からのシフトを目指している。

浮体式の持続可能な海洋都市

浮体式の建築物・エコロッジで、海洋研究所や教育施設、住宅、ホスピタリティ、小売、エンタメ・コミュニティ施設などを設置。持続可能な自給自足型の海洋都市を構築する。都市内部では、住民や働く人、陸からの観光客を収容。環境に優しい経済圏を形成する。海洋都市を含むプロジェクト全体で、30,000人以上の雇用創出を目指している。

エコツーリズムの提供と環境意識の醸成

海洋資源を活用したエコツーリズムを展開し、収入確保と雇用創出につなげる。浮体式のエコリゾートやエコロッジを設置して、陸からの旅行者を集客。サンゴ礁による海の「森林浴」で、心身への癒しを提供する。また、浮体式の海洋保全センターを設置して、海洋環境やサンゴ礁の再生など生物に対する教育も行う。

相性のいい産業分野

製造業・メーカー

環境に優しく海洋生物の拠り所となる人工リーフの開発

住宅・不動産・建築

環境負荷が低く、長期滞在できる安全性を備えた浮体式建築の構築

環境・エネルギー

発電した電力をまとめて蓄電・安定供給するインフラの構築

資源・マテリアル

都市で生じた廃棄物・排出物を資源化する循環リサイクルの構築

教育・人材

洋上にある地の利を活かした研究開発の推進

農業・林業・水産業

タンパク質だけでなく多様な栄養を摂取できる水産物の開発

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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