No.823
2024.01.24
高電圧・高パワー性能を持つ、コバルト不使用な充電池
コバルトフリーなリチウムイオン二次電池 by 東芝
概要
「コバルトフリーなリチウムイオン二次電池 by 東芝」とは、コバルトを含まない高電位正極材料で構成した、高いパワー性能を持つ次世代のリチウムイオン二次電池。5V級高電位正極の構成部材を改良して、電解液の分解の際に起こるガス化の副反応を抑え、3V以上の高電圧、5分間で80%の急速充電性能、高いパワー性能などを実現している。5V級高電位正極を用いた二次電池はこれまで、電解液の分解によって発生するガスで電池が膨張する、寿命が短命化するなどで高い性能を得ることが難しかったが、それを解消した。調達のしやすさと資源保全を両立する高性能なリチウムイオン二次電池として、産業機器やモビリティ、ロボット、IoTなど、多様な領域での活用が期待される。
なにがすごいのか?
コバルトを使わず高性能なリチウムイオン二次電池を実現
5V級高電位正極の活用に伴うガス発生のメカニズムを解明
ガス発生抑制技術を開発し、5V級高電位正極の改良による高い電池性能を確保
なぜ生まれたのか?
レアメタルの1つであるコバルトは、リチウムイオン電池の正極を安定させる性質を持つため、EV用充電池などに用いられその需要は上昇傾向にある。しかし、コバルトの生産国は限られているため、安定的な調達が難しくコスト面でも課題があった。そうした背景から昨今、コバルフリーの高電位正極の開発が進められてきた。ただ従来技術では、電位の高さゆえに電解液が酸化分解されてガス化し、電池の膨張や短寿命化などを引き起こすため、高い性能を持つ電池の実用化が難しかった。
そこで東芝は、ガスの発生メカニズムを解明した上で、電極の構成部材を改良してガスを抑える技術を開発。同技術を用いて5V級高電位正極を構築し、ラミネート型のリチウムイオン二次電池を試作。試作の性能評価では、3V以上の高電圧や5分間で80%充電できる急速充電性能、充放電を6,000回以上繰り返しても初期の80%以上の容量を維持する耐久性、-30℃~60℃に対応する低・高温耐久性を実証している。
なぜできるのか?
ガスを抑制する技術の開発
電解液が分解されてガスが発生するのは、高電位正極の表面であることや、正極材料に含まれる金属が溶出して負極表面でガス発生を促進するといったメカニズムを解明。それを踏まえ、正極の粒子表面を改質して電解液との反応を抑える技術と、溶出した金属を負極表面で無害化する技術を開発した。これにより、5V級高電位正極の伝導性を活かした高い電池性能を実現している。
培ってきた独自の二次電池開発技術
負極には、次世代の負極材料であるニオブチタン酸化物(NTO: Niobium Titanium Oxide)を採用している。既存のリチウムイオン二次電池「SCiB™」の技術開発の中で、長寿命・急速充電という従来特性を持ちながら、さらに容量を増やせる材料としてNTOに着目。NTOは、従来部材のチタン酸リチウム(LTO)の約3倍の理論体積容量密度(エネルギー密度)を持つ。独自の電極化技術を用いることで、NTOを使った負極を構築。同負極を採用し、電池性能を高めた。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
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