No.1134
2026.06.24
凧あげと偏西風を利用したトヨタの発電技術
凧あげ発電

概要
「凧あげ発電」とは、トヨタが研究する上空に凧を飛ばし、風の力を利用して発電する技術。世界でもっとも平均風速が強いと言われる日本上空の偏西風に凧を飛ばし、その風力を活用する。日本はエネルギーのほとんどを輸入に頼り、国土の多くが山岳地のため、再生可能エネルギーにも限界もある。トヨタは、エネルギー自給率を高めるために「密度の高い自然エネルギーはないか」ということで、日本上空の偏西風から“採掘”することを考え2018年に研究を開始。最終的には、隣接するカイトをワイヤーでつなぎ、地上から持ち上げた荷物をカイトの間で移動する運搬「スカイフック」や、高空を活かした衛星光通信の地上への「雲上中継地」など滞空性プラットフォームとしての活用を想定している。
なぜできるのか?
凧で発電を目指す「マザーシッププロジェクト」
トヨタは、将来日本が抱えるであろう社会課題を想定し、資源の多くを輸入に頼っている日本の将来のエネルギーセキュリティのために2018年「マザーシッププロジェクト」を立ち上げた。「マザーシッププロジェクト」ではいくつかの再生エネルギー源がある中でも世界の中で最も平均風速が高いと言われている、日本上空域の偏西風に着目。この尽きることのない強力な気流をエネルギー源として捉え、カイト(大型凧)を対流圏界面域に飛ばし、発電しようという研究を行っている。
大型凧と日本上空の偏西風を利用した発電
上空約10㎞の偏西風域で大きな凧を揚げ、その凧は高強度のスーパー繊維(高い強度と弾性率を持つ繊維)のテザー(凧糸)で地上にある発電機に係留し、そこで「発電」させる。凧はテザー(凧糸)で地上から係留し風力で上空に揚がる。通常高度が上がるほど風力は強まり、凧やテザーの重量、空力抵抗に揚力が打ち勝てばどんどん上空に揚がる。地上付近は風が弱く、地形や障害物による風の風の乱れ影響がある場合が多く、凧あげではテザーを持って走るというアシスト方法がある。こういった点から、凧には上空10km付近まで到達する能力があり、その付近の風力をエネルギーに変える機能を持たすことができると考えた。今は、あらゆる風況や天候でも「空中に留まり続ける」姿勢制御の技術を鍛えている。苦難の末、ドローンや飛行船でも飛ぶことが難しい風速30メートルでも安定して飛べるようになったとのこと。日本上空の偏西風は、世界でもっとも平均風速が強いと言われており、この風力を活用するアイデアは多くの航空系研究者が持っていたが、「凧」を活用するアイデアは少なかった。このアイデアは、専門家の間でも「面白い」という反応がほとんどで、特にアメリカの研究者は「関わりたい」と言ってくれる人も多いのだという。
膜体インフレータブル構造の採用と凧の軽量化を実現する膜材
凧構造は膜体インフレータブル構造を採用している。膜体インフレータブル構造とは、軽くて強い布で出来た筒状(インフレータブルチューブ)の外皮を骨格とし、筒の中の空気の内圧を内皮という自転車タイヤのチューブのような袋で保持しその剛性を保たせる構造。凧をいかに軽量化できるかが課題だったが、膜材は、トヨタ、東洋紡株式会社、サカイ産業株式会社、東洋クロス株式会社が共同開発し、驚きの強度を実現しつつ従来比31.5%も軽量化を実現した。学会で発表すると「その膜材が欲しい」という話が世界中から届き、宇宙航空研究開発機構 (JAXA)からも共同開発のオファーがくるほどとなっている。凧形状(空力特性)は断面形状を翼型で揚力を最大化し抗力を最小化する。
1000mの安定飛行を達成
2020年5月に最初の目標である地上高度1,000m飛行を達成した。次の目標は、5000m上空に8日間飛ばし続けること。2023年11月時点では高度2700m、12時間の飛行が最長で、まだまだ耐候性や信頼性の向上など課題がある。いちばん優先したいことは気象への活用としており、凧を海上であげて、凧糸に水蒸気量を測るセンサーを付けて「水蒸気量の垂直方向分布」を実測すれば、より精密な気象情報を得ることが可能となる。その値をスーパーコンピュータで計算すると、線状降水帯を正確かつ、かなり事前に予測できることが確かめられている。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
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Top Image : © トヨタ自動車 株式会社

