No.1154
2026.07.13
世界初、透明性と鮮やかなフルカラー3Dを両立したホログラム
フルカラー3次元像を表示する透明なホログラム

概要
「フルカラー3次元像を表示する透明なホログラム」とは、所定の光を照射するとフルカラーの3次元像を空中に表示できる透明なホログラムを作製する技術で、NHK放送技術研究所(技研)と東京科学大学が共同で開発した。透明なガラス基板越しに「フルカラー3次元像」を表示する新たなホログラムの作製手法であり、この技術の最大の特徴は「高い透明性」と「鮮明なフルカラー3D」を両立していることにある。今回開発した技術は、いくつか存在するホログラム作製手法のうち「表面レリーフ型ホログラム」と呼ばれる手法を応用したもの。従来、この手法を用いる際の課題となっていた光の散乱(基板の白濁)を抑えることで、観察者はガラス越しの景色をクリアに見ながら、その手前に浮かび上がる高精細な3次元像を同時に楽しむことができるようになった。この開発成功により、店舗のショーウィンドウ越しに商品の立体解説を表示したり、博物館の展示ケースで展示物に重ねて案内を表示したりするなど、このシステムの応用が期待される。この技術は、5月28日(木)~31日(日)に開催する「技研公開 2026」で展示される。また、この技術に関する論文が、コンピューターグラフィックスとインタラクティブ技術に関する国際会議「SIGGRAPH 2026」のTechnical Papers部門にJournal paperとして採択され、7月にロサンゼルスで本成果に関する発表を行う予定となっている。
なぜできるのか?
「高い透明性」と「鮮明なフルカラー3D」の両立
ホログラムとは、光の波の性質を利用して物体の3次元情報を記録したもので、見る角度によって見え方が変化するもので、その技術はホログラフィーと呼ばれている。NHK放送技術研究所は、特別な眼鏡を必要としない高精細な3次元ディスプレーの実現を目指し、「ホログラフィー」による3次元像表示技術の研究を進めてきた。基板の表面に微細な凹凸構造を作ることで光を曲げる「表面レリーフ型ホログラム」は、比較的大きな静止画の3次元像を広い視域で表示できるが、従来は光の散乱によって背景が白く濁ること、フルカラー化の複雑さが大きな課題となっていた。NHK放送技術研究所と東京科学大学が共同で開発した透明なガラス基板越しに「フルカラー3次元像」を表示する新たなホログラムの技術はこの2つの課題をクリアし、「高い透明性」と「鮮明なフルカラー3D」の両立を実現している。
光の振幅(波の大きさ)も活用する手法で、ガラスのような高い透明性の維持に成功
従来は、表面レリーフ型ホログラムの設計には光の位相(波のズレ)を用いることが一般的で、透明な基板表面に「深い段差」や「鋭いギザギザ」の凹凸構造を作る必要があり、これが光を散乱させて背景が白く濁って見えていた。この新たな手法では光の振幅(波の大きさ)も活用する設計が導入されている。これにより、従来は深さ約1μmだった基板表面の凹凸を約0.5μmという「浅い段差」かつ「滑らかに連続する形状」にすることが可能となった。余計な光の散乱が大幅に抑えられ、ガラスのような高い透明性を維持することに成功した。
1枚のホログラムで鮮明なカラー3次元像の表示に成功
1枚のホログラムで、赤、緑、青の各色に対応した光を別々の方向から照射し、各色の3次元像を同じ位置に重ね合わせる技術を確立。従来の場合、フルカラー化には赤、緑、青の基板を重ねるなどの複雑な構造が必要で、さらに透過度が低下する要因となっていた。これにより、複数のホログラムやカラーフィルターを重ねることなく、1枚の薄い加工面だけで鮮明なカラー3次元像を表示できる、シンプルで高透過な構造を実現している。また、従来と比べて計算負荷がほとんど増えない一方で、これまで利用されていなかった光の振幅分布も利用するため、3次元像の画質向上にも成功した。
非常に高精細なスペックを有した試作ホログラム
試作のホログラムでは、約12cm角のサイズに、約600億ピクセル(245,760 × 245,760)を配置。ピクセルの間隔は0.5μm(1mm の 2000 分の 1)という細かさで、超高精細な画素構造を実現。また、凹凸構造の高さを32段階で細かく調節することで段差の不連続性を抑え、より精密に光の情報を再現できるようにしている。透明化とカラー化の新設計に伴い見える範囲は制限されるが、観察に十分な範囲を確保している。視点移動に伴って像が滑らかに変化する、ホログラフィーならではの自然な立体感を可能にした。
相性のいい産業分野
- メディア・コミュニケーション
店舗のショーウィンドウの透明度を保ったまま、空中へ鮮烈な3D立体広告をシームレスに表示
- 生活・文化
展示ケースのガラスをそのままディスプレイ化し、中の実物資産に重ねて高精細な案内グラフィックスを融合
- IT・通信
自動車や航空機のフロントガラスの視界を100%確保しながら、ドライバーの眼前に高精度な3Dナビゲーションを投影
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © NHK 放送技術研究所
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