No.942

2024.11.26

幹細胞生物学と機械学習の融合が生んだサステナブルなシーフード

培養シーフード

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概要

「培養シーフード」とは、細胞培養技術を用いて作られる海産物。生物学と機械学習の組み合わせにより、商用養殖が難しいETP種(絶滅危惧種、危急種、保護種)から新しい幹細胞を単離し、海産物の安定供給を実現する。近年、世界的に水産物の需要が増加する一方で、乱獲や海洋汚染による漁獲量の減少が問題となってきた。そこで、シンガポールに拠点を置くUmami BioWorksは、「培養シーフード」の製造技術を生産者にライセンス供与することで、海洋汚染物質を含まない安全な水産物の供給を実現。海洋資源の保全に寄与する知財として期待される。

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なぜできるのか?

特殊な細胞を用いたスマートな培養プロセス

従来の培養肉では、脂肪や赤身など、肉を構成する部位ごとに細胞を培養する必要があり、それぞれの部位を組み合わせても良質な完成品にならない可能性があった。一方、「培養シーフード」では、多様な部位に分化可能なメセンキマル幹細胞(MSC)を活用。これにより、骨、脂肪、筋肉などを単一のプロセスで同時に製造でき、迅速かつ低コストでの生産を実現。従来の培養肉製造の課題を克服している。

機械学習を用いた開発効率の向上

開発では、Umami BioWorks独自の機械学習ツールキット「ALKEMIST」を活用。細胞のエサや廃棄物、製品の風味・食感といったデータベースをもとにデジタルツインを構築し、コンピュータ内でシミュレートすることで、実験の手間を短縮。製品開発の効率化と生産プロセスの最適化を実現した。

味のプロファイリング

Umami Bioworksは、開発に当たり、小売店やレストランでの海産物のプロファイリングを実施。海産物の美味しさを解析・再現することで、消費者に受け入れられる風味と食感を再現。培養シーフードの市場適応性を高めている。

相性のいい産業分野

食品・飲料

絶滅危惧種に指定された二ホンウナギの培養と販売

農業・林業・水産業

マイクロプラスチックを含まない安全な魚の供給

AI

「培養シーフード」開発に用いたデータセットの販売

製造業・メーカー

頭からバリバリ食べれる「骨なし培養魚」

生活・文化

自宅で海産物を培養・養殖できる培養キット

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © Umami Bioworks