No.943

2024.11.26

VR空間の移動をサポートし没入感を高める歩行アシストスーツ

にゅーぼ

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概要

「にゅーぼ」とは、VR酔いを抑えて、バーチャル空間の移動をサポートする歩行アシストスーツ。立ったまま座るような姿勢を取れるアシストスーツ「アルケリス(archelis)」をベースに、センサー・計測器などで身体の動きを検知して、バーチャル世界に動作を反映するプロダクトの開発を進めている。重心移動で歩行でき、VR空間を実際に歩いているような没入体験が可能。また視覚情報と身体感覚のズレが小さくなるため、VR酔いが減り、VR空間で長時間プレイできる。ゲームや映像などエンタメ領域で広く活用でき、将来的には、「しっぽ」のような器官で人の身体機能を拡張して新たな体験を提供する「しっぽ型拡張器官」の開発が期待されている。

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なぜ生まれたのか?

ソニー×東大×東京藝大の社会連携講座「IGNITE YOUR AMBITION(IGNT)」のチームプロジェクトの1つとして、取り組みが始まった。IGNTは、社会実装を通じてテクノロジー×デザイン×ビジネスのスタートアップ手法を身に着ける実践型講座で、2019年から開始。社会と技術の兆しから未来を妄想して現代にバックキャストし、野心的なアイデアを生み出すことを目指して、学生とソニーの社内起業家らが共に活動している。

「にゅーぼ」も講座内のプロジェクトの1つで、開発チーム名はNEWVO(にゅーぼ)。2050年にVR空間で生きる人々を「繋ぐ・支える」プロダクトの開発を目指し、バックキャストで検討を進めて「にゅーぼ」の開発に至った。クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」でもプロジェクトを立ち上げ、開発を進めている。

なぜできるのか?

アシストスーツ「アルケリス」の活用

立ち姿勢の負担を減らすアシストスーツ「アルケリス」をベースに用いている。「アルケリス」は、脚のももとすねに体重を分散して支える仕組みを構築しており、体重が集中する足裏の負荷や足全体の疲労を低減。立ち状態でスーツに体重を預けられるため、医療現場など、長時間の立ち仕事による足腰の負担が減る。「にゅーぼ」では同機構を用いて、立ち姿勢での長時間のVR利用に伴う負荷を軽減。VR酔いが少ない立ち姿勢で課題だった、ヘッドセットの重さによる身体への負荷を減らし、楽にプレイできる環境を提供する。

立ち姿勢のまま座って操作する手法の構築

身体感覚と視覚情報のズレがVR酔いを引き起こすとして、ズレを抑える立ち姿勢を基本とした、新しいVRコントローラー「にゅーぼ」を着想した。特に、座り姿勢でのスティック操作によるVR空間の移動・回転動作は、ズレが大きくなるため、VR酔いが起きやすい。そこで、立ったまま座るような体勢が取れる「アルケリス」とコラボして開発を推進。圧力センサーやIMU(慣性計測ユニット、回転や加速度、位置の変化などを検知するデバイス)を「アルケリス」に搭載して身体の動きを検知し、VR空間に操作情報として伝達する。

VRの未来ビジョンからのバックキャスト

IGNTで2023年よりチーム活動を始め、バーチャルとリアルが融合する未来で、「しっぽ」のような身体器官による新体験の提供を考案。バックキャストでプロダクトを検討し、「VRオープンワールドゲームを何百、何千時間遊べる世界を作る!」を目下の目標に設定。「にゅーぼ」の開発に着手した。開発にあたり、未来の世界では「人々が現実・VR空間を行き来する」と想定。VRにネガティブな印象をもたらすVR酔い・疲れを軽減し、場所を問わずに利用できる新しい方法として、「にゅーぼ」の開発を進めている。

相性のいい産業分野

アート・エンターテインメント

ゲームや映像、バーチャルイベントなどで没入感を高めるツールとして活用

旅行・観光

バーチャルツアーの移動に用いてリアルな観光体験を提供

住宅・不動産・建築

物件をリアルに体感するオンライン内覧・現場見学会の開催

医療・福祉

リハビリ患者の歩行訓練・歩行シミュレーション用に提供

AI

生体情報から筋肉の疲労度合いを認識し、人のサポートを制御するAIの開発

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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