No.822

2024.01.12

発熱する布で調理・保温するポータブルレンジバッグ

WILLCOOK®

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概要

「WILLCOOK®」とは、発熱する布で調理や保温ができる持ち運び可能なレンジバッグ。糸一本一本が発熱する布製ヒーターと専用バッテリーで発熱させる仕組みで、5分で80℃まで発熱可能。温度調節機能もあり、電子レンジのように食材の温め調理ができる。軽くて持ち運びしやすいため、外出先やオフィス、被災地など、場所を問わずに温かい食事をとることができる。アウトドア・レジャーや災害時、日常での活用に加え、ヘルスケア・医療分野などへの展開も期待される。

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なにがすごいのか?

  • 布繊維の発熱で調理・保温を行う

  • 持ち運びしやすいバッグ仕様でどこでも使用可能

  • 温度調節でき、発熱させない時は保冷バッグとしても活用できる

なぜ生まれたのか?

WILLTEXの企画・開発担当者が、子どもの真冬の野球練習時に「温かい弁当を食べさせたい」と考えたことがきっかけだった。そのアイデアから、阪神淡路大震災の被災時に、自衛隊の炊き出しで食べた震災後の温かい食事のありがたさを想起し、本格的な開発に着手した。開発にあたっては、繊維自体が発熱する三機コンシスの布製ヒーティングシステム「HOTOPIA」を活用。約3年の開発期間を経て、約60℃〜約150℃の保温・調理ができる「WILLCOOK HO-ON」を製品化した。
「WILLCOOK®」は、「CES 2024 Innovation Awards」で最優秀賞にあたる「Best of Innovation」を授賞。現在は、200℃まで発熱が可能な「WILLCOOK KA-ON」の開発も進めている(2024年1月時点)。

実現事例 実現プロジェクト

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WILLCOOK HO-ON

「WILLCOOK HO-ON」は、「WILLCOOK®」の初号機として開発されたポータブルウォーマー。レトルト食材を、約20分で美味しさを感じる温度(55℃)まで温め、温かいペットボトルの温度を2時間以上保つことができる。繊維業界に知見を持つWILLTEXがプロジェクトを立ち上げ、三機コンシス、スリーハイ、丸東が参画。各社の強みを活かし、WILLTEXは企画を、三機コンシスは技術アドバイス、スリーハイは素材調達・試験、丸東は製造を担った。開発途上では、安全面や保温力、サイズ、素材面で課題にぶつかるも、試験・調整を重ねて「WILLCOOK HO-ON」を開発。2022年10月1日~11月29日まで、クラウドファンディングサイト「Makuake」で先行販売し、約1,100万円の応援購入を集めた(目標達成率3,689%)。

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なぜできるのか?

布製ヒーティングシステム「HOTOPIA」の活用

繊維自体が発熱する世界初の布製ヒーティングシステム「HOTOPIA」を活用している。「HOTOPIA」は、三機コンシスが、導電繊維を編み込む独自技術と、縦横に伸縮可能な独自開発の電線を用いて構築。一般的な布と同じ柔軟性・軽量性を持ちながら、40℃~最大250℃までの発熱と温度調節ができる。繊維が発熱するため、従来の電熱配線タイプの毛布などとは異なり、素早く均一に温まる。通常の布同様、裁断やミシン縫製が可能で、さらに従来の布より約2倍の伸縮性と熱にも耐えられる耐久性を持つ。洗濯も可能。温度調整ができるスマートフォンアプリ「HOTOPIA」も提供しており、バッテリー残量や使用時間なども確認できる。

発熱を促す専用バッテリー

付属品として布製ヒーターを発熱させる専用のバッテリーを提供している。バッテリーをバッグ内の専用ポケットに入れるだけで、簡単に接続と発熱ができる。フル充電で約8時間使用可能。USB Micro-B端子で充電でき、メンテナンスも簡易化している。

バッグを構築する独自の5層構造

高い保温性や耐久性を可能にするため、バッグ本体を独自の5層構造で構築している。表面の表地には燃えにくい素材などを用いて、その下層に反射熱の効果を高めるアルミシート、保温性・断熱性の高い断熱中綿、繊維自体が発熱する布製ヒーティングシステム「HOTOPIA」を配置。食品などに接する裏地には、耐久撥水・撥油・防汚加工などが施された生地を用いている。保温力が高いため、バッテリーを使用しない状態では、保冷バッグとしても活用できる。冷えたビールでは、美味しいと感じる温度(約4℃~8℃)を約2時間キープする。

相性のいい産業分野

製造業・メーカー

調理・保温ができる服飾品やアウトドア用品の開発

食品・飲料

屋外で温めることを楽しむ食品・飲料の開発

官公庁・自治体

防災時やインフラが整っていない場所で活用

医療・福祉

ミルクやおしりふきなど乳児のケアや保温が必要な医療機器への活用

IT・通信

遠隔から操作できる無線通信の温め機能を持つ容器開発

旅行・観光

旅行や観光のオプションとして保温・保管バッグサービスを提供

この知財の情報・出典