No.958
2024.12.04
農産物の“おいしさ”を瞬時に解析・可視化するシステム
おいしさの見える化

概要
「おいしさの見える化」とは、AIを用いて野菜などの農産物の画像を解析し、“おいしさ”(味覚)を可視化するシステム。撮影画像のRGB(赤・緑・青の色味)分布データを農産物の食味データと掛け合わせ、甘味・塩味・酸味・旨味・苦味を解析して、チャートや解説を表示する。スマートフォンアプリなどから利用でき、従来のような検査装置・設備の設置が不要で、非破壊による解析を可能にしている。農産物の生産から消費までのプロセスで広く活用でき、見た目ではない“おいしさ”基準の流通を促すとともに、食領域での幅広い展開が期待される。
なにがすごいのか?
農産物の画像から“おいしさ”を解析・可視化
画像解析と18種類の農産物の食味データを掛け合わせて非破壊解析を実現
場所を問わずスマホやタブレット端末などで簡単に使用可能
なぜ生まれたのか?
開発のアイデアは、2009年頃からマクタアメニティの代表と山形大学の野田准教授との間で温められてきた。当時、同社の事業軸は農作物のサプライチェーンマネジメントシステム「アグリSCM」で、事業化前の「おいしさの見える化」技術は、基礎データの蓄積や特許申請などを行っている段階だった。事業化に向けて取り組みを始めたきっかけは、2011年の東日本大震災。震災の影響でSCM事業の継続が困難となり、特許出願中だった「おいしさの見える化」技術の事業化検討を開始した。2014年には経済産業省から「ものづくり補助金」の採択を得て、山形大学との共同開発を加速。2016年には同省の「異分野連携新事業分野開拓計画」の認定を受け、産官学で連携しながら開発を進め、「おいしさの見える化」のシステムを構築した。2020年には、応用ソリューションとして「食べごろの見える化」技術を開発。ラ・フランスとアールスメロンの画像から追熟判定が可能なシステムを構築している。
実現事例 実現プロジェクト

AI 画像解析を活用した荒茶の品質推定技術
「AI 画像解析を活用した荒茶の品質推定技術」とは、「おいしさの見える化」技術を用いて伊藤園と共同で開発した技術。茶畑で摘んだ生葉に一次加工(蒸す・揉む・乾燥)を行った荒茶はこれまで、人の嗅覚や味覚などによる官能検査が主流で、技術習得に長い年月を要していた。また、専用の成分分析機器は価格が高く、規模の大きい農家でないと導入が難しかった。そこで、スマホの撮影画像をもとに、AI画像解析で荒茶の成分状態(旨味成分のアミノ酸など)を分析し、品質推定できる技術を開発。2022年春から、伊藤園の茶産地育成事業の一部産地で試験運用を行っている。高品質な茶葉の安定調達・供給を支える技術として期待されている。
なぜできるのか?
RGBヒストグラムによる農産物情報の取得
農産物を撮影した画像をもとに、光の波長を検出する分光器でRGB(赤・緑・青)の3原色に分解し、RGBヒストグラムとして個々の農作物情報をデータ化して取得する。分解前には、画像の影や反射光を除去して補正し、分析精度を高めている。可視光での測定・解析を行うため、冷蔵庫などに入っていた低温の農作物にも対応できる。
画像解析、食味データベース、AIを組み合わせた解析システム
AI を用いて、RGBヒストグラムのデータと、野菜や果物など18種類の農作物の食味データベースを照合し、味覚情報の解析・可視化を実現している。データベースには、味覚センサーなどの分析機器による食味解析で求めたおいしさの構成要素(甘味や旨味etc.)や、相関のあるRGBデータなどを蓄積。AIが撮影画像のRGBデータを味覚データに変換し、さらに味覚データからおいしさを表すコメントを推定して表示している。
どこでも簡単・手軽に使えるシステム設計
システムはクラウド上で構築しており、スマホやタブレット端末などがあればどこからでも使用可能。ユーザーが農作物の画像を送ると、クラウドに搭載されたAIが数秒ほどで解析・情報提供を行う。情報表示は、モバイル端末のほか、デジタルサイネージやARにも対応している。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
・特許第6238216号/第6758727号/第6632014号 etc.
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © マクタアメニティ 株式会社