No.1137
2026.06.26
廃棄物を質の高い合成ガスに変換する技術
WTEシステム

概要
「WTE(Waste-to-Energy)システム」とは、廃棄物をエネルギーに変える革新技術。このシステムを開発したエナウム株式会社は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアンに搭載された「Mr. Fusion」のように、身近な廃棄物から無限のエネルギーを生み出す技術の実現を目指しており、このシステムはCTOの橋本芳郎が25年以上の歳月をかけて研究・実証してきた。徳島県での実証設備で30時間連続運転を達成し、製造したBTL燃料は国の長期検証試験において軽油相当の性能が確認されている。これまでにも「ゴミから燃料を作る」という試みは世界中で行われてきた。しかし、ガス化の過程で必ず発生する「タール」による設備閉塞や、原料の均質化を担保するために必要な厳格な事前分別にかかる莫大なコストといった理由で企業が次々と経営破綻に追い込まれた。国内の化学産業においては、石化基礎化学品の原料となるナフサを輸入原油に依存してきていた。同社の技術は、特許取得済みの二段ガス化システムとFT(フィッシャー・トロプシュ)合成を組み合わせることで、廃プラスチック・都市ゴミ等の廃棄物から化学産業の基幹原料であるナフサを国産化し、輸入依存という日本の構造的リスクを解消する。また、廃棄物処理手数料により原料コストがマイナスからスタートする「ダブルインカムモデル」は、原油価格・円安リスクから切り離された事業構造を実現する。
なぜできるのか?
特許取得済みの「二段ガス化システム」
「二段ガス化システム」は第一段階(炭化・熱分解工程)と第二段階(高温ガス化・改質工程)で構成される。第一段階(炭化・熱分解工程)は、廃棄物を無酸素雰囲気下で加熱し、均質な炭化物(チャー)に変換する。水分や組成がバラバラな廃棄物を体積比で約1/3に減容化し、安定したエネルギー原料へと標準化するこの工程が、後段の高温ガス化の効率を決定づける。次に第二段階(高温ガス化・改質工程)で、炭化物を1000℃以上の超高温環境下で過熱水蒸気と反応させ、合成ガス(シンガス)へと変換する。この「二段ガス化システム」は、特許取得済みの技術で、ガス化の過程で必ず発生する「タール」による設備閉塞、原料の均質化を担保するために必要な厳格な事前分別にかかる莫大なコストの解消を実現する。
質の高い合成ガスの生成が可能
産み出されるガスは、世界最高水準である水素濃度60%、一酸化炭素30%、タールはほぼゼロで生成される。ガスの生成は、1000℃超の高温環境下で進行し、この1000℃を超える苛烈な熱環境は、設備を詰まらせる高分子タールを熱分解(クラッキング)する。空気を使用しない過熱水蒸気を水素の供給源とすることで、不活性な窒素の混入を完全に排除し、生成ガスの純度を極限まで高めている。外部機関の測定では、ガス中のタール含有量はわずか「13〜14mg/Nm³」を達成しており、従来型の空気吹き込み式ガス化炉と比較して桁違いに低い数値とされる。また、水素と一酸化炭素の比率はFT合成において最も効率的な黄金比とされる「2:1」に極めて近い比率となっている。
廃棄物の分別不要で高純度の合成ガスの生産を実現
廃プラスチック・廃タイヤ・食品残渣など、炭素を豊富に含む有機系廃棄物は事前の分別不要で、すべて高純度の合成ガスへ変換される。金属やガラス等の無機物が混入していても、最終的に無害なスラグとして排出されるため(路盤材等へ再利用可能)、廃棄物処理の分別コストを大幅に削減することが可能となる。
原料コストが「マイナス」からスタート
従来の石油化学や廃食油を用いたSAF製造(HEFA方式)は、常に「原料調達コスト」と「価格高騰」というリスクを抱えてきた。しかしエナウムのシステムは廃棄物を原料としており、処理に困っている自治体や企業からゴミを受け入れる際に、1トンあたり数万円の「ゲートフィー(廃棄物処理手数料)」が収益として入ってくる。つまり原料調達コストが「マイナス」からスタートする。そこに燃料・化学品の販売収入が加わる「ダブルインカムモデル」は、原油価格や為替の変動リスクから構造的に切り離され、原油価格に左右されない強靭な収益基盤となる。
コンパクトなモジュール設計
巨大な化学プラントを必要とせず、廃棄物が発生する現場に近いオンサイトで稼働する「分散型エネルギーリファイナリー」として機能する。産業廃棄物を大量に排出する工場、廃棄物処理場、港湾施設など、導入先の選択肢は多岐にわたる。日本国内だけでも年間約4,000万トンの一般廃棄物と、それを上回る産業廃棄物が排出されている。そのうち廃プラスチックをはじめとする有機系廃棄物の相当量は、いまだ埋め立てや単純焼却に頼っている。このシステムが全国に普及すれば、日本中の廃棄物置き場を「都市の油田」に変えることができる。
ナフサやメタノールなど多様な化学品への変換が可能
一般的な空気吹き込み式ガス化炉では、不活性な窒素が全体の36〜58%を占めてしまい、FT合成に供するには大規模な分離・精製が必要となる。同社の合成ガスは、ナフサ・SAF・水素・メタノールなど多様な化学品へ変換が可能。現在、SAFに加え、ナフサの選択的製造を実現するため、ASF(アンダーソン・シュルツ・フローリー)分布を制御する触媒最適化が次の鍵となっている。
相性のいい産業分野
- 環境・エネルギー
輸入原油由来のナフサに依存する既存ラインへ「ゴミ由来のグリーンナフサ」を供給し、化学品サプライチェーン全体の脱炭素化を推進
- 製造業・メーカー
処理手数料とエネルギー販売益の双方を長期かつ安定的に獲得する、地政学リスクに強い大型グリーンインフラ投資としての展開
- 官公庁・自治体
都市ゴミの埋め立て地不足や焼却時のCO2排出に悩む自治体に対し、ゴミを燃やすのではなく「質の高い工業ガス・原料」へ変える次世代の処理インフラとして提案
- 流通・モビリティ
原油相場や為替リスクに左右されない、国産の安定的な代替クリーン燃料(BTL燃料や将来的なSAF)を提供するエネルギーパートナーとしての活用
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © エナウム 株式会社

