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2021.08.17
知財ニュース
アジア初の民間宇宙港「北海道スペースポート」のコミュニティ設立─宇宙版シリコンバレーの形成を加速
ロケット等の射場を持つ「北海道スペースポート」(HOSPO)の運営会社であるSPACE COTANは7月30日、応援コミュニティ「HOSPO SUPPORTERS」の設立を発表した。HOSPOは、宇宙産業に携わる企業や研究機関などが利用できる民間の宇宙港で、民間企業が利用できるアジア初の宇宙港として2021年4月から本格稼働している。SPACE COTANは、HOSPO SUPPORTERSの設立によって協賛企業との連携を強め、施設拡充とHOSPOを核とした宇宙版シリコンバレーの形成を加速していくという。
HOSPO誕生の背景には、宇宙産業の急成長がある。人工衛星のデータ活用や、惑星探査プロジェクト、民間企業による宇宙サービスの開発など、年々高まる宇宙への輸送需要を受け、開かれた宇宙港として稼働を開始した。
滑走路とJAXAの実験施設
現施設
ではロケット射場1カ所と1,000mの滑走路を所有。堀江貴文氏が創業した宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズのロケット打上げもHOSPOで実施され、21年7月には発射した観測ロケット「MOMO」が宇宙空間到達に成功している。
インターステラテクノロジズがMOMOを打上げた射場「Launch Complex - 0」
HOSPOでは今後、人工衛星用ロケット射場の2カ所増設と、スペースプレーン(飛行機タイプの宇宙船)実験機に対応する300mの滑走路の延伸を計画。増設したロケット射場は、23年・25年に運用開始を予定している。
2025年増設予定の人工衛星ロケット射場「Launch Complex-2」のイメージ
施設拡充の先には宇宙版シリコンバレーの形成がある。HOSPOを核に、宇宙産業の製造拠点・関連企業・研究拠点・観光産業などを集積させ、北海道の既存産業とも連携してシナジー効果を生み出すような産業地区の形成を目指している。日本政策投資銀行(北海道支店)等による試算では、新射場の整備による道内経済波及効果は年間267億円に及ぶという。
HOSPO SUPPORTERSには地域創生やSDGsへの貢献を目指して宇宙ビジネスに取組む企業が参加し、設立時点で28社集まった。今後は、さらに応援の輪を広げつつ企業間連携や事業展開を促進し、宇宙版シリコンバレーのより早い形成を目指していくという。
北海道に本校を持つ通信制のクラーク高校では、高校生が人工衛星の開発・打上げ等を主導で行う宇宙教育プロジェクトの開発が進められている。初回の打上げ時期は2022年度中予定とのことで、HOSPOの新射場から宇宙に飛び立つ可能性がある。民間の宇宙港が宇宙事業参入への間口を拡げ、日本と世界の宇宙産業がより勢いを増していきそうだ。
Top Image : © SPACE COTAN 株式会社