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2024.02.19
知財ニュース
世界初、電通大と阪大が「動くロボット」を食べたときの感覚の変化を実証─罪悪感や新鮮さなど、知覚や食感を調査
電気通信大学と大阪大学の研究グループは2024年2月15日、人が食べられるロボットを開発し、動いている状態で食べたときに知覚・味覚・食感が変化するかを調べた研究結果を発表した。
可食素材を用いたロボットはこれまでも開発されているが、人が食べたときの感覚や心理的な反応については調査されていない。今回、世界で初めて、ロボットが動いているときに食べると、人の知覚と食感に変化が生じることが明らかになった。研究成果は、国際科学誌「PLOS ONE」に掲載された。
研究グループは実験にあたり、ゼラチンと砂糖を主原料に、市販のグミ程度の硬さの空気圧で動くスティック状の可食ロボットを開発。内部の空気室2つに同時に空気を供給すると縦方向に振動し、空気を交互に入れると横に揺れる仕組みで、可動部を全て食べられるように設計した。
ロボットでは2つの実験を実施。参加者が「ロボットの見た目からどのような印象を受けるか」と、実際に「ロボットを食べた際の印象、味、および食感」を検証した。実食は、止まっている状態と動いている状態の2条件で行った。
(a)可食部および可食部に空気を供給するチューブを接続するための部品の3Dモデル/(b)aの断面図、可食部の内部には2つの空気室がある/(c)可食ロボットの実物/(d)実験のために、3Dプリンタで製作した持ち手を付けた可食ロボット
見た目の印象実験では、縦方向の振動よりも、横方向に揺れる動きに対して生きているような感覚を強く抱くことが判明。実食実験では、止まっているロボットを食べたときよりも、動いているロボットを食べたときの方が、ロボットに対して、生き物らしさや新鮮さ、知性、感情、罪悪感などを強く知覚すると分かった。また食感では、動いている状態は「コリコリ」、止まっている状態は「むにゃむにゃ」などといった異なるオノマトペを知覚した。
本研究は、人と可食ロボットとの相互作用を研究する「Human-Edible Robot Interaction(HERI)」の探求につながる。研究グループは、生きているように見えるロボットを食べる経験から、食育における哲学的議論を広げ、「生命とは何か」や、ロボットを食べる際に生じる感情やバイオエシックス(生命倫理)に関する理解を深められると考えている。
HERI研究が進むことで、従来の人―ロボット間の相互作用研究とは異なる観点から、生き物やロボットへの新しいアプローチを提供できる可能性もある。
Top Image : © 国立大学法人 電気通信大学