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2023.09.07
知財ニュース
明治大、AIが味を推定し『10の60乗』通りの味を再現する調味装置「TTTV3」開発─料理名や写真で味を再現
明治大学・総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室は8月31日、味の再現・制御が可能な調味装置「TTTV3 (Transform The Taste and reproduce Varieties:味を変えて品種の違いを再現する調味家電)」を開発したと発表した。
「TTTV3」は、基本五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)や辛味などを感じさせる液体を食べ物に混合噴射して、味を再現する。総務省「異能vationプログラム」で宮下教授が開発した味覚メディア「味わうテレビ TTTV」を発展させた装置で、今回3機目となる。
噴射液を収めている20の味タンクは各タンク1,000段階で制御でき、1那由他(10の60乗)通りの味の組み合わせが可能。またアルカリ性物質の添加による中和や、味覚修飾物質の活用や、他の味によるマスキング効果の利用で元の食品から特定の味を薄める「味の減算」もできる。0.02ml単位の細やかな味制御が可能で、ワインやカカオ、梅干しなど、産地や品種の微妙な味の違いまで再現できるという。
「TTTV3」にはさらに、ChatGPTなどに用いられている大規模言語モデル(LLM)と連携可能な対話システムを追加。マイクで料理名を指定する音声入力や、料理の画像をカメラにかざす画像入力を行うと、LLMが味を推定して調味を行う。例えば、市販のハンバーグをセットし、旅先で食べたハンバーグの画像をカメラに読み込ませると、LLMがハンバーグソースの味を推定して思い出の味を再現するという。
宮下研究室では「味覚はメディア」と位置づけて、これまでも味覚を操作できる装置を複数開発している。
今回開発した「TTTV3」では、味の再現だけでなく、安いチョコレートドリンクを高級品の味わいに変えるなど、クオリティレベルを上げることも可能。宮下教授は、2023年5月にテレビ放映された「TTTV3」の公開実験の中で、「今この世にある食べ物よりもおいしいものが生まれる可能性がある」と述べている。近い将来、これまでの価値観では語れない、未知の美食に出会えるかもしれない。
Top Image : © Meiji University