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2021.07.08

知財ニュース

P&G、NASAと提携し宇宙で洗濯できる洗剤を開発─2022年にISSで検証実験予定

宇宙洗濯

米Procter & Gamble(P&G)は、宇宙環境で洗濯が可能な洗剤を開発したと発表。開発にあたりP&GとNASAは航空宇宙契約(Space Act agreement)を締結した。洗剤は、環境負荷の少ない洗濯がコンセプトの同社ブランド「Tide」をベースに開発を実施。P&Gは、2022年に国際宇宙ステーション(ISS)へ打ち上げられる貨物輸送機で洗剤を運び、汚れを落とす成分の安定性と性能の検証を行う予定だ。

地球外の洗濯での課題は、成分の安全性、NASAの生命維持装置との互換性、洗濯に使用可能な水量が限られること、洗濯した水を飲料水レベルまで浄化する必要性があることなどが挙げられる。P&Gは、宇宙での使用に特化した完全に分解可能なTide洗剤を開発。宇宙で出た洗濯物の悪臭・汚れ除去と、循環型水システムへの対応を見込んでいる。

Tideはこれまで、製造・包装・消費といった一連の洗濯ライフサイクルにおいて環境負荷の低いサービス提供を追求、エネルギー、水、廃棄物の資源効率化に取り組んできた。宇宙という資源制約が厳しい環境に対応できる洗剤開発もその一環で、本取り組みをまた地球上でも活かす方針だ。

Tide

  ▲2022年にISSで検証予定の洗剤「Tide To Go Pens」「Tide To Go Wipes」
  ※上画像はイメージ、いずれも地球製品(既存)の画像

ISSに滞在する宇宙飛行士は衣類を数回着た後に交換するが、新しい衣類は現在、ISSに補給物資として届けられている。しかし運べる貨物量には限りがある。NASAのアルテミス計画(月面探査)や火星有人探査などの、数年に渡るような深宇宙探査では補充は困難となる。洗濯という手段が取れない場合は、乗組員1人当たり年間およそ160ポンド(約73Kg)の衣類をISSに運ぶ必要が出てくる。

NASAとTideの研究者は今後、ISSでの洗剤検証に加えて、月面・火星探査時の惑星居住施設への洗濯・乾燥装置の導入も想定し研究を進めていくという。


惑星居住施設と言えば、火星の現地原料を使って3Dプリンタでロボットが建築を行う「Marsha」が開発され、月では月面での食料補給・月産月消を目指す「宙農」という農業プロジェクトが進められている。Tideの取組みを含め、宇宙関連技術は日々進化しており、遠い宇宙で生活する未来は、確実に近づいている。

プレスリリースはこちら


Top Image : © Procter & Gamble

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