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2021.11.18

知財ニュース

くら寿司100%出資の新会社「KURAおさかなファーム」設立─スマート養殖による国内初のオーガニックフィッシュを生産

KURAおさかなファーム

回転寿司チェーン「くら寿司」を運営するくら寿司株式会社は、海洋資源の保全と漁業の持続可能な発展に貢献すべく、全国の生産者との協力や漁業の独自生産を行う子会社「KURAおさかなファーム株式会社」を2021年11月1日に設立した。資本金は1000万円、代表取締役社長には、くら寿司の取締役副社長の田中信氏が就任する。

新会社の事業内容は、高付加価値魚の「自社養殖」、AIを活用した「委託養殖」、くら寿司や全国のスーパーへの「卸売」とのこと。

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世界の漁業・養殖業は近年増加しているのに対し、日本は大幅に減少している。その原因として、少子高齢化や都会への若者流出による後継者不在など、人手不足が挙げられている。一方で、海外の魚食ブームにより、魚の価格は年々上昇。将来的には、安定した価格と量の供給が課題になるとされている。

日本国内では、2020年12月1日施行の改正漁業法により、企業の養殖分野への参入が規制緩和されるなど、国も漁業活性化に向けた動きを強めている。そのような状況下において、同社は「持続可能な漁業」と「食材の安定供給」、高品質でリーズナブルな寿司の提供を今後も継続していくための「事業の新たな柱」の構築を目指し、養殖業を基盤とするKURAおさかなファーム株式会社を設立した。

KURAおさかなファーム株式会社は漁業協同組合に加入し、漁業権を取得したうえで高付加価値な魚を自社ファーム(自社養殖)で育てていくという。まずは、国際的基準を満たしたオーガニック水産物として、日本で初めて認証取得した「オーガニックはまち」の生産を開始。国内での流通に加え、海外輸出も視野に入れるとともに、他魚種の生産についても検討する。

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また、人手不足と労働環境の改善を目指し、AIやIoTを活用した「スマート養殖」も開始。持続可能で国際競争力のある水産経営モデルを創出する。スマート養殖は、水産養殖にAIやリモートセンシング等の技術を活用するウミトロン株式会社と協業し、同社が開発したAI・IoT技術を活用したスマート給餌機「UMITRON CELL(ウミトロンセル)」を活用した養殖事業となる。

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UMITRON CELL

UMITRON CELLとは、スマートフォン・クラウドを活用した生簀の遠隔餌やり管理が可能な、水産養殖向けスマート自動給餌機。IoT、衛星リモートセンシング、機械学習をはじめとした技術が用いられており、給餌の最適化だけでなく漁業従事者の労働環境の改善にもつながる。これにより、労働負荷の削減と餌の最適化、海へ餌が流出することを防ぎ、環境に配慮した養殖業を実現した。

KURAおさかなファーム株式会社によると、同社の展開するスマート養殖については外部の生産者への委託養殖となるが、新会社が中長期契約で全量買い取りすることで、生産者の収入の安定化も狙うという。また、新会社が各生産者に機器をリースすることで、養殖業への新規参入を促し、雇用創出や地方活性化につなげる構想だ。

将来的には、養殖だけではなく、これまで10年以上かけて協力体制を構築してきた全国の漁協などと提携し、国産天然魚の卸売り事業も計画するとのこと。

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Top Image : © くら寿司 株式会社

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