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2024.04.18

知財ニュース

ブリヂストン、空気の要らない月面探査車用タイヤを開発─「第39回 Space Symposium」で新コンセプトモデルを初展示

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ブリヂストンは、月面探査車用タイヤの研究開発において、性能向上を目指して新たなタイヤを開発した。そのコンセプトモデルを、2024年4月8日(月)から11日(木)まで米国・コロラドスプリングス市で開催の米国最大の宇宙関連シンポジウム「第39回 Space Symposium」のJAXAが運営する日本パビリオンJapan's Space Industryの同社ブース内にて、初めて展示する。

モビリティの進化を支え続けるブリヂストンの技術イノベーションは、これまでモータースポーツなどの「極限」の環境において磨かれてきた。同社は、本プロジェクトを通じて、月面という人類が活動する新たな「極限」の環境に挑戦することで、モビリティの未来になくてはならない存在となることを目指していくとしている。

月面探査車用タイヤに求められる特長は、非空気入りで、激しい気温差や放射線に耐えることができ、砂地でも沈み込まずに走行できるタイヤだ。月面は高真空(ほとんど空気が無い状態)であるため、通常のゴム製のタイヤのように空気で荷重を支えることが困難な環境だ。そのため月では空気を使わずに支えるタイヤが必要なのだという。

スクリーンショット 2024-04-15 4.06.15 月面探査車用タイヤ(第1世代)

スクリーンショット 2024-04-15 4.06.27 月面探査車用タイヤ(第2世代)

また、月面には地表を守る大気がないため、宇宙線と呼ばれる高エネルギー放射線に曝され、また温度も120℃から-170℃になると考えられている。そのため、同社はゴムや樹脂といった高分子材料は、月面環境では硬さが大きく変化してしまううえに劣化が早く使用が困難なため、金属を用いたタイヤを開発しているとのこと。

さらに、月面はレゴリスと呼ばれる微細な砂で覆われており、走行時にタイヤが沈んで埋もれてしまう可能性があるのだという。そのため接地面を大きく確保し、レゴリスに沈み込まずに走行できるタイヤを目指しているのだという。

ブリヂストンの月面探査車用タイヤは、第1世代において砂漠で荷物を悠々と運ぶラクダのふっくらとした足裏から着想を得て、金属製の柔らかいフエルトをタイヤのトレッド部にあたる接地面に配置することで月面を覆うレゴリスと呼ばれるきめ細かい砂との間の摩擦力を高め、より優れた走破性を実現する、同社独自の技術を採用した。

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この技術を進化させつつ、開発されたのが第2世代のタイヤだ。これまでの研究開発を通じて分かってきた月面を走るモビリティに求められる、より厳しい走破性と耐久性に対応するため、新たな骨格構造を適用。新構造では、空気充填が要らない次世代タイヤ「エアフリー」で培ってきた技術を活かして新たに薄い金属製スポーク(※1)を採用し、トレッド部を回転方向に分割している。
(※1タイヤの接地面とホイールを繋ぎ、荷重を支えるとともに衝撃を吸収する機能を持つ部材)

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これにより、岩や砂に覆われまた真空状態で激しい温度変化や放射線にさらされる極限の月面環境下においても、走破性と耐久性の高次元での両立を目指しているとのことだ。

また、リアルとデジタル技術の進化により金属製スポークの形状や厚みを構造シミュレーションで最適化し、しなやかに変形しながらも金属部材の局所的なひずみを最小化して疲労耐久性を高めつつ、分割したトレッド部により接地面積を大きくしてタイヤを沈み込みにくくすることで、走破性もさらに向上させている。

同社はこれまで培ってきたタイヤ開発の知見やシミュレーション技術を駆使し設計・試作したタイヤを、実際に月面で走らせることができるのかを評価するため、月面に近い環境で実証実験を行っている。例えば、月面のように広大な砂地で様々な起伏がある、鳥取砂丘の月面実証フィールド「ルナテラス」で走行試験を行い、タイヤの耐久性能や駆動力などのデータを積み上げているのだという。

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月面探査車用タイヤプロジェクトは、ブリヂストンが中期事業計画(2024-2026)で探索事業として位置付けている「エアフリー」の活用を地球から宇宙・月面へ拡大した取り組みだ。将来的には月面という「極限」の環境で磨く技術を、地球上で使うタイヤにも還元し、さらなる価値創造へ繫げていくとしてる。

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株式会社ブリヂストン「月面探査車用タイヤ」公式サイト

Top Image : © 株式会社 ブリヂストン

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