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2024.05.13

知財ニュース

世界初の「歯生え薬」、京大発ベンチャーらが24年9月より治験開始―先天性無歯症の治療への展開を目指す

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京都大学発ベンチャー企業のトレジェムバイオファーマらは2024年5月2日、歯の再生治療薬「歯生え薬」の治験(人による臨床試験)を開始すると発表した。2024年9月より、成人を対象に行う。歯を生やす薬の開発と治験は世界初。治験を踏まえ、生まれつき一部の歯が生えてこない先天性無歯症の新たな治療法として用いる予定だ。将来的には、虫歯や外傷などで失った歯の再生治療も想定している。

歯生え薬」は、歯の成長を阻害するタンパク質「USAG-1」の働きを抑えて、通常は退化して消えてしまう“歯の芽”の成長を促す。京大医学研究科 高橋克博士が率いる研究グループは、2007年にUSAG-1が欠損しているマウスが通常よりも多く歯を持つことを発見。USAG-1の抑制で歯を再生できる可能性を考え、働きを抑える抗体薬を開発した。

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開発後は試験を重ね、「歯生え薬」を投与したマウスやフェレット、ビーグル犬などで、歯の回復を確認。結果を受け、ヒトでの臨床試験を決定し、予備毒性試験などを経て治験開始に至った。今回の治験では、人体に対する安全性を確認するため、健康な成人(30歳以上65歳未満の男性)30人を対象とする。

また治験結果を踏まえ、第2段階として、2〜7歳の先天性無歯症患者を対象に、歯を生やす効果があるかを検証する予定。大阪市の医学研究所北野病院で実施を予定している。

sub 「歯生え薬」を異なる用量で投与したフェレットの上顎切歯

先天性無歯症は遺伝性のもので、現時点では治療薬が存在しない。食べる機能の低下や、歯を支えるあご骨の萎縮などの悪影響を及ぼすが、入れ歯かインプラントによる治療が一般的で、根本的な治療方法がなかった。

今回の治験では、安全性の検証とともに「歯生え薬」の適切な投与量を見きわめる予定。先天性無歯症患者向けの治療法として、2030年の実用化を目指す。その先には、後天的な歯の欠損への展開も見据えている。虫歯などで歯を失った際、“歯の再生”を気軽に選べる未来もそう遠くなさそうだ。

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「トレジェム・バイオファーマ」公式サイト・研究開発
関連特許情報(特開2021-176829)

Top Image : © トレジェムバイオファーマ 株式会社

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