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2022.02.17
コラム | 特許図面図鑑
【特許図面図鑑 No.11】図面で垣間見る日本の歴史④~高度経済成長期~
ユニークで奥深い「特許図面」の世界を紹介するこのコラム。今回は「図面で垣間見る日本の歴史」シリーズ第四弾、高度経済成長期です。(過去のコラム:①明治期、②大正期、③昭和初期)
第二次世界大戦の敗戦後、朝鮮戦争(1950年)特需もあり、日本は急速に復興していきました。技術革新が進み生活が豊かになっていった時代です。それはすなわち、多くの発明が生み出され、特許出願が行われていたということ。
そこで本記事では、豊かな生活を実現する家電である「炊飯器」や、成長期の象徴とも考えられる「大阪万博(1970年)」に関連する図面を紹介します。
01 三重電気自働炊飯器(特公昭32-5987)
発明者:三並 義忠 氏
出願人:東京芝浦電気株式会社
出願日:1955.5.2、公開日:1957.8.7
特公昭32-5987 J-PlatPat リンク
釜でご飯を炊くことは、掃除や洗濯と並んで大事な家事労働の1つであり、経験やスキルが必要とされるものでした。そこに登場したのが、本発明。東芝の協力会社であった株式会社光伸社の三並社長により、自動式電気釜が開発されたのです。
従来技術として二層構造の釜が存在し、「常に良質にして均一の炊飯を行うには相当の熟練を要する(特公昭32-5987より)」との課題がありましたが、本発明の三層構造にてそれを解決しました。
家事労働の軽減だけでなく、より美味しいご飯の提供にも繋がり、国民の幸せ度向上に深く寄与した発明と言えるでしょう。
(参考:「日本初の自動式電気釜」東芝未来科学館)
02 コンベヤ附調理食台(実公昭37-018526)
考案者:白石 義明 氏
出願日:1960.2.20、公告日:1962.7.24
実公昭37-018526 J-PlatPat リンク
こちらは回転寿司の生みの親である白石氏による実用新案登録案件です。戦後に大阪で寿司屋を営んでいた同氏は、より効率化した寿司の提供について試行錯誤。ビール工場の見学をきっかけとし、ベルトコンベアを活用した回転寿司のシステムを開発するに至りました。
そして回転寿司は徐々に東日本にも広がり、1970年の大阪万博にて一般的に広く知られることとなりました。
(参考:「回転寿司 - 戦後日本のイノベーション100選」発明協会)
03 浴湯装置(特開昭48-24865)
発明者:藤川 昭三 氏、山谷 英二 氏
出願人:三洋電機株式会社
出願日:1971.8.3、公開日:1973.3.31
特開昭48-24865 J-PlatPat リンク
大阪万博と言えば、本件も欠かせません。三洋電機によって披露された人間洗濯機「ウルトラソニックバス」に関わる特許出願です。「ウルトラソニックバス」は、超音波による気泡で体を洗浄し、温風での乾燥までを自動で行うという優れモノ。この装置を一目見ようと、連日大勢の来場者が訪れたようです。(参考:「人間洗濯機、70年に描いた未来社会(古今東西万博考)」日本経済新聞, 2019.10.1)
なお、本件発明者の1人である山谷氏が顧問を務めているサイエンス社(HP)は、2025年大阪万博にて似たコンセプトの人間洗濯機を出展するとのこと。(参考:『大ヒット「ミラブル」の次は「人間洗濯機」』産経新聞, 2021.7.21)
55年の時を越え、どの様な装置になるのか。2025年の大阪万博が楽しみですね。
04 改札装置(特公昭53-034760)
発明者:立石 一真 氏、上村 幹夫 氏、常深 真一郎 氏、遠藤 侯一 氏
出願人:立石電機株式会社
出願日:1973.3.3、公開日:1974.11.1
特公昭53-34760 J-PlatPat リンク
こちらは現オムロン社の創業者である立石氏によって発明された、自動改札装置に関する案件です。自動改札装置は1967年に北千里駅(大阪府)に初めて導入され、改札口の混雑解消に寄与しました。その後も改良が重ねられ、本特許は乗車券を手に持ったまま改札を通過できるというアイデアに関するものです。
(参考:「自動改札システム ‐ 戦後日本のイノベーション100選」発明協会)
05 身体検査記録装置(特公昭52-018514)
発明者:立石 一真 氏
出願人:立石電機株式会社
出願日:1973.8.20、公開日:1975.4.19
特公昭52-018514 J-PlatPat リンク
前の案件に続き、立石氏による発明。身体測定時において、省力化&能率化の観点から、測定結果と検査者像を同一画面に記録するというアイデアです。
なお、こちらは立石氏が72歳当時に発明した案件です。出願時である1973年頃は「健康工学」に注力していた時代であり、その一環で本発明が生まれたのかもしれません。(参考:「第五話 健康工学から企業の公器性の実現へ - 創業者物語」オムロン)
50年の時を経て、そろそろ本システムが導入されるでしょうか…?カメラ画像によって身長測定ができれば、器具と身体との接触機会を減らすこととなり、感染症対策にも繋がりそうです。
以上、高度経済成長期に出願された4件の特許出願案件、1件の実用新案を紹介しました。人間洗濯機から自動改札機まで、幅広い分野において技術革新が進んだ時代ですね。
「特許権という独占的な権利をインセンティブとして掲げることで、技術の進歩を図り、産業の発達に寄与する。」という趣旨である特許制度が、社会情勢とよく合致した時代であったと言えるかもしれません。
次回は「昭和後期・平成初期」をお届けします。どうぞお楽しみに。
ライティング:知財ライターUchida
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