Pickup

2023.02.09

レポート

韓国、中国、日本─ヘルステックやMR領域で躍進する、アジアのスタートアップたち【CES2023】

CES

2023年1月5日から8日までラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES(Consumer Technology Association)」。知財図鑑は「CES 2023」にメディアメンバーとして公式認定され、知財図鑑の知財ハンターである出村 光世荻野 靖洋が現地に向かい、出展企業へのレポート取材を行いました。

世界中の企業から、挑戦段階の先端テクノロジーやプロトタイプが集結し一挙に発信された本イベント。本記事では、アジア勢のヘルステックにフォーカスしてお伝えします。(取材/文・荻野 靖洋)

CES2023 レポート 第一弾はこちら


世界最大級のテクノロジーの見本市CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)。1月5日からラスベガスで開催された同イベントに知財図鑑の特派員として現地の取材に向かった。

CESの会場は大きく3つに分かれているが、主にスタートアップやJETROなど国ごとのブースが出展されているエリアと、TechWestエリア、スタートアップや大企業が混在しているエリアから、アジア勢のヘルステックやMR(複合現実)の気になる知財を紹介したいと思う。

CES

スタートアップ編 韓国

まず目についたのは韓国勢のブースの大きさだ。スタートアップが多いVenetianExpoの2F・1Fどちらのエリアも「KOREA」の文字が大きく見られた。大企業が多いTechEast側もSAMSUNG・LG・Lotteなど韓国の大企業ブースが大きなエリアを占有し、世界観を体現すべく会場の施工も費用を投じているように見受けられた。

IMG 1395


■視界良好!AIで水滴を検知して自動で落とす監視カメラ「MICROSYSTEMS Drop Free Glass for Autonomous Driving」

「CES2023 Best of Innovation」を受賞していた本プロダクトは次世代のスマートシティに大きく貢献するプロダクトだ。
外に設置する監視カメラはレンズに雨が付着してしまうと、監視映像がクリアに見えなくなってしまう。このデバイスは機械学習により映像に水滴の付着が検出されると、自分で微振動し、水滴を落としてしまう。常にクリアな監視映像が確保できる、優れたプロダクトだ。

IMG 1405

監視カメラ 「MICROSYSTEMS Drop Free Glass for Autonomous Driving

■まるで牛乳?ナッツから作られた代替ミルクとそれを用いた乳製品「Nuldam」

同じく韓国のヴィーガンベーカリーブランド「Nuldam」は代替ミルクをブースで紹介していた。ブースではミルクだけではなく、バターやクリームチーズなども試食が可能になっており、ヴィーガンフレンドリーかつ環境負荷の低いこの製品は乳牛の新しい形を提示したと言えるだろう。

IMG 1425

ナッツから作られた代替ミルク 「Nuldam

■脳波からうつ病を診断し、治療をしてくれるメンタルヘルス向けヘルメット型ガジェット「iSyncBrain」

コロナを経て、世界的にメンタルヘルス関連のソリューションが多く見られたCES2023だが、韓国のiMediSyncが展示するiSyncBrainというヘルメット型脳波測定ガジェットは、10分間の脳波を測定し、機械学習から被験者が脳疾患かうつ病になっていないかを診断する。
加えて、このガジェットは、診断結果に合わせてLEDにより脳内のミトコンドリアを増やしてくれる治療を行えるという。現在は軍隊や警察などで導入されているとのことだが、このガジェットを用いて今後はメンタルヘルスもAIによるリモート診療などが行われると予測される。

IMG 1497

メンタルヘルス向けヘルメット型ガジェット 「iSyncBrain

■Samsungグループの企業 HARMAN「Ready Upgrade」

Samsungのグループ企業HARMANによる「Ready Upgrade」システムは、最初からアップグレード可能なハードウエアを装備しておき、これを駆動するソフトウエアを1年半~2年おきくらいのペースに書き換え、それによって、発売から時間が経過したクルマを最新の状態にアップデートする、というもの。
Teslaと同じようなシステムだと考えられるが、すぐに使用できるハードウェアと事前に検証されたソフトウェアの完璧な組み合わせにより、迅速な開発と立ち上げが可能になり、シームレスなアップグレードと適応がすべて大幅に低コストで実現される。

2023年1月13日には、フェラーリとHARMANがパートナー契約を結んだことが発表され、将来のスーパーカーのキャビンに最先端技術が導入されることが期待される。( 参考:HARMAN Automotive and Ferrari Partner to Propel the In-Cabin Experience into the Future – Today

Ready Upgrade

モビリティシステム 「Ready Upgrade

スタートアップ編 日本

日本のスタートアップもVenetianExpoの1FにJETRO主導のJ-Startupが大きくブースを構えていた。規模は韓国やフランスには及ばないが、中央のロビーを囲む開けた世界観のブースは各国から注目され賑わっていた。

CES 日本ブース


■1日1分!超音波が生じる非接触振動で頭皮をケアするデバイス

まず目を引いたのは落合陽一が代表を務めるピクシーダストテクノロジーズとアンファーが共同開発したスカルプケアデアバイス「SonoRepro」だ。
長年ピクシーダストテクノロジーズが研究してきた超音波から生じる非接触な振動で頭皮を刺激するこのデバイスは、筆者も体験したが、お椀型の特殊な形により、中央に見えない力が発生している。この超音波の力により、家庭で本格的なヘアケアを実現している。頭皮の悩みを抱えている男性諸君は必見なプロダクトであり、欧米よりも中国・韓国のアジア男性たちが強い関心を示していた。

IMG 1433

超音波スカルプケア「SonoRepro

■長時間の立ち仕事に革命!立ちながら座れるアシストスーツ

同じく注目を浴びていたのはアルケリス株式会社が展示していたアシストスーツ「archelis」だ。このプロダクトはデジタル要素は全くないが、装着すると構造体だけで自重を支えて座ることができる。
長時間立ちながら手術をしないといけない外科医の悩みから生まれた本プロダクトだが、製造業や農業・水産業など多くの立ち仕事の業界の働き方がこのプロダクトの登場で大きく変化するだろう。

Untitled (1)

足腰の負担なく長時間の立ち仕事ができるアシストスーツ「archelis

スタートアップ編 中国

広東省恵州市に本社がある電気機器メーカー「TCL」は、テレビ、冷蔵庫、エアコンのほか、AR領域にも踏み入れていた。VRゴーグルの中のLEDなどを作っているとのこと。

TCL

TCL

TCLエレクトロニクス

余談 アジア勢のブースについて

以上、CES 2023のアジア勢の出展にフォーカスしてお伝えしたが、中国・韓国の大企業ブースが大きく、展示に投資しているのが伺えたのが印象的だった。

LGの展示ブースでは、最大30フィート(約9メートル)離れた場所に置いた外部ボックスにLGの無線伝送技術「Zero Connect」で接続し、4K 120Hzの映像をリアルタイムで受信するとのこと。

LG LG。大型湾曲LEDでお出迎え

Untitled (1)

NIKONのブースでは、UNREAL RIDEというバーチャルプロダクションの展示があった。「InterBEE」ではSONYが展示していたが、この辺りの技術は各社切磋琢磨している印象だ。

FmA0ofGaYAENBNJ

▼CESの現地レポートはTwitterで

膨大な数のテクノロジーが集まっていた「CES 2023」。個人的には、コロナ禍を経てヘルステックの出展が多い印象を受けた。知財ハンターの目線から気になったものをまとめてTweetしているので、気になる方はこちらもどうぞ。


CES 2023 メディアメンバー/知財ハンター

出村光世 Mitsuyo Demura

Konel 代表 / プロジェクトデザイナー
知財図鑑 代表 / 知財ハンター

アクセンチュアにてビジネスコンサルティングに従事しながら、2011年にKonelを創業。同年、東急エージェンシーでのパラレルワークを始め、2017年まで広告プロデューサーとして活動。2017年よりKonelの経営を本格化させ、現在では日本橋、金沢、下北沢、ベトナムを拠点とし、30職種を超えるクリエイターとアート/研究開発/デザインを越境させるプロジェクトを推進。2020年、新規事業のための知財データベース「知財図鑑」を創業。50人を超える知財ハンターと共に テクノロジーと未来の洞察を続け、オープンイノベーションを促進させるためのメソッド「DUAL-CAST」を発表。 代表的なプロジェクトに、「脳波買取センター BWTC」「ミカン下北」「#しかたなくない」「ゆらぎかべ-TOU」など。 One Show/D&AD/Red Dot/ACC/グッドデザイン賞など国内外での受賞歴多数。早稲田大学理工学部経営 システム工学科卒。

荻野靖洋 Yasuhiro Ogino

Konel 共同創業者 / テクニカルディレクター
知財図鑑 共同代表 / 知財ハンター

1985年静岡県生まれ。幼少期をオランダで過ごし、日本に帰国後早稲田大学に入学。株式会社マインディア(現 : 株式会社ラフノート)にてエンジニアとしてサービス開発を行う。2011年フリーランスのフルスタックエンジニアとして独立、Konel創業。2016年Konel取締役に就任。2020年、株式会社知財図鑑のテクニカルディレクターに就任。一般社団法人テクニカルディレクターズアソシエーション(TDA)オーガナイザー。

【知財ハンターに取材を依頼する】

広告