Pickup
2025.03.21
レポート
【CES 2025】 現場から見るAI・モビリティ・スリープテックの進化、知財ハンターが見る未来への展望

AIとロボティクスが注目となった「CES 2025」
2025年1月、米国ネバダ州ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2025」。今年は特に、NvidiaやSphereで行われたデルタ航空のKeynoteが注目を集め、AIやロボティクス分野の革新が話題の中心となった。
知財図鑑の取材チームは、メディア取材とideaflowの出展を目的に現地を訪問。9日間にわたる滞在では、メディアデーのイベントやカンファレンスの取材、出展活動を行い、最先端のテクノロジーに触れる機会を得た。本記事では、知財ハンター・TDAオーガナイザーの荻野靖洋がメディア取材の視点と出展側の視点を交えながらリアルにお届けする。
滞在スケジュール
Day1:1月4日 日本時間18:00〜日本発。9〜10時間のフライト、時差が17時間遅いため、時間を遡って現地時刻11時ごろに着く。
Day2:1月5日 メディアデー: LaunchIT / Unveiled というメディア限定イベント
Day3:1月6日 メディアデー: KeynoteやConference
Day4:1月7日 CES1日目: 出展開始、9:00〜18:00現地
Day5:1月8日 CES2日目: 9:00〜18:00現地
Day6:1月9日 CES3日目: 9:00〜18:00現地
Day7:1月10日 CES4日目: 最終日、9:00〜16:00までで撤収
Day8:1月11日 現地時間11:00発のフライトで帰国
Day9:1月12日 日本時間17:00ごろ到着
主要会場の特徴と注目ポイント
会場は大きく4つのエリアに分かれ、それぞれ異なる特色を持つ。Las Vegas Convention Center(LVCC)ではPanasonic、SONY、NIKON、Samsung、LGなどの大手企業がモビリティやエンターテインメント関連技術を展示。
Venetian Expoの1階にはスタートアップや各国のパビリオンが集まり、ideaflowはこのエリアのJapan Pavilionに出展。2階はヘルステックや家電、中小企業向けの展示が多かった印象だ。また、ARIAでは広告、ブランド、エンターテインメント関連のカンファレンスが行われ、Mandalay Bayでは「Unveiled」やKeynoteなどのメディア向けイベントが開催された。
最先端プロダクトとピッチイベント
「LaunchIT」で際立った日本企業の活躍
1月5日に開催された「LaunchIT」では、日本企業10社が300社のメディアを前にピッチを行った。特に注目を集めたのは、ロケーションデータと図面を統合管理する「Calta」、カスタマイズ可能な汎用AIロボット「JIZAI」、自動でピントが合うオートフォーカスグラスを開発した「Elcyo」、記憶に基づいた学習・教育サービス「Monoxer」など。
同日16時にはCTA主催の「Tech Trend To Watch」が行われ、GenZ世代の消費傾向、サステナビリティの進展、AI技術の発展、モビリティテクノロジー、ヘルステック、スマートホームの未来が議論された。17時からの「Unveiled」では、メディア限定で多くの新技術が公開され、注目のプロダクトが数多く披露された。
ロボティクス技術の進化とユニークな展示
会場には、ロボティクス分野の革新が随所に見られた。フランスのEnchanted Toolsが開発したキャラクター型搬送ロボット「Miroki」、オープンソースのヒューマノイドロボット「Reachy 2」、カスタマイズ可能な6本脚AIロボット「JIZAI Mi-Mo」などが展示され、ユカイ工学の「みるみ」や「猫舌ふーふー」といった独創的な製品も目を引いた。
Miroki
みるみ(ユカイ工学)
ヘルステック分野の進展と未来の医療技術
ヘルステックでは、味の素が開発した電気刺激で味覚を増強する「エレキソルト」、睡眠の質を向上させるAIデバイス「AI Mopill」が注目を集めた。特にスリープテック分野では、睡眠時の呼吸状態を最適化する「AI Mopill」のほか、脳波を測定しながら睡眠の質をリアルタイム分析するスマートピローや、環境を自動調整するスマートベッドが展示された。これらのデバイスは、従来の睡眠モニタリングから一歩進み、ユーザーの状態に応じたフィードバックを提供することで、より個別化された睡眠ケアを実現する。
エンターテインメント分野では、画像 × オーディオデバイスの「Monar」が興味を惹いた。
Japan Pavilion 出展の経験と得た知見
JETROが支援するCES出展の仕組み
CESのJapan Pavilionへの出展は、JETROが毎年主導している。出展には設立5年以内の企業であることが求められ、日本本社の米国法人も応募可能だが、CTAの審査を通過する必要がある。知財図鑑は2020年創業のため、今回ギリギリのタイミングでの出展となった。
出展に向けては、CTAへの応募、ピッチデッキの作成、英語でのプレゼン準備、宿泊や航空券の手配、プロモーション動画の準備が必須。JETROは出展費用の負担、ピッチ指導、アメリカのビジネス文化レクチャーを提供し、出展者を支援してくれる。
ネットワーク環境の課題とその対策
CESではネットワーク環境の不安定さが大きな課題となった。4Gと5Gの回線を確保していたものの、混線によりほとんど繋がらなかった。ソフトウェアのデモをリアルタイムで実施するのは困難であり、動画やスライドを活用するのが有効な戦略であった。
日本企業の存在感とビジネスチャンス
来場者の3分の1は日本企業であり、日本の技術力への関心の高さが伺えた。特にideaflowのような新規事業開発やR&D向けのプロダクトには、国内外の企業から多くの関心が寄せられた。
「CES 2025」を通じ、日本企業がグローバル市場で競争力を高めるためには、技術革新に加え、プレゼンテーション力やビジネス戦略の強化が不可欠だと再認識された。今後のCESでは、より多様な分野での技術展示や市場とのマッチングが求められる。総じて「CES 2025」では、知財とビジネスの新たな可能性を提示する場だと肌で感じられた。次回のCESに向け、さらなる準備と戦略の構築をはかっていきたいと思えるものだった。
Konel/知財ハンター・出村光世と荻野靖洋が出演したBASSDRUMとのの最速レポート配信はYouTubeで公開中。ぜひこちらもチェックしてほしい。
関連記事
CES 2025 メディアメンバー/知財ハンター
荻野靖洋 Yasuhiro Ogino
Konel 共同創業者 / テクニカルディレクター
知財図鑑 共同代表 / 知財ハンター1985年静岡県生まれ。幼少期をオランダで過ごし、日本に帰国後早稲田大学に入学。株式会社マインディア(現 : 株式会社ラフノート)にてエンジニアとしてサービス開発を行う。2011年フリーランスのフルスタックエンジニアとして独立、Konel創業。2016年Konel取締役に就任。2020年、株式会社知財図鑑のテクニカルディレクターに就任。一般社団法人テクニカルディレクターズアソシエーション(TDA)オーガナイザー。
Konel/知財ハンター・出村光世と荻野靖洋が出演したBASSDRUMとのの最速レポート配信はYouTubeで公開中。ぜひこちらもチェックしてほしい。