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2022.04.20
レポート | 体験レポート
知財ハンターが注目する SXSW Pitchコンテストから「Innovative World Technologies 部門」ファイナリスト5組を紹介
毎年3月にアメリカテキサス州オースティンで開催される、音楽、映画、インタラクティブをテーマにした巨大ビジネスカンファレンス＆フェスティバルSXSW。2022年は、コロナウイルスの感染拡大の影響で、初のリアルとオンラインでのハイブリッド開催となりました。
今回のレポートでは、新興企業が多数集まり毎年開かれる「SXSW Pitch Startup Event」に焦点を当ててご紹介。「SXSW Pitch Startup Event」は、VC投資家や専門家の前で、自社のプロダクトやサービスをプレゼンテーションする、SXSW最大のスタートアップピッチコンテストイベントです。事前に選出された新興企業の中から、2022年は9つの部門で5組ずつ、合計45組の企業がファイナリストとして選出されました。
例年、イノベーティブなビジネスアイデアが飛び出すSXSW Pitchから、本コラムでは、その中でも「Innovative World Technologies 部門」のファイナリスト5名を紹介します。
▼2022 SXSW Pitch「Innovative World Technologies部門」ファイナリスト
・Daxtgyr（パキスタン）
・HILOS （オレゴン州ポートランド）
・Kleiderly （ドイツ、ベルリン）
・Nth Cycle（マサチューセッツ州ビバリー）
・SAVRpak（カリフォルニア州サン・ファン・カピストラノ）
Daxtgyr（パキスタン）
【概要】Daxtgyrは、小売業者とメーカーおよびサプライヤーを直接つなぐB2Bマーケットプレイス。小売業者は、アプリを通してメーカーおよびサプライヤーから物資を注文でき、翌日には商品を受け取ることが可能。Daxtfyrは小売業者が製品を適正価格で調達できるようサポートし、パキスタン国内の貧困問題の解決の一助となることが期待されている。
パキスタンのスタートアップ・Daxtfyrは、小売業者とメーカー・サプライヤーを直接つなぐサプライチェーンを運営しています。発表によると、パキスタンの中小企業の小売業はGDP全体の約30〜40％を占めているとのこと。それにもかかわらず、彼らの多くは高額請求する卸売業者から商品を調達しなければならず、ローンやクレジットも得られない状況が続いていたそうです。同社が運営するアプリでは、適正な卸売価格で小売業者に販売。Daxtgyrを3ヶ月使用する場合はクレジット購入も可能で、パキスタンの貿易の断片化とサプライチェーン問題の是正に貢献します。
HILOS （オレゴン州ポートランド）
【概要】HILOSは、3Dプリンターで靴を作成するブランド。オンデマンドで製造することで、過剰生産と無駄を抑えて靴を製造する。使用後の靴は分解しリサイクルに回すことが可能。世界中で例年、靴が大量生産され、その多くが使われずに埋め立てられている中、サステナブルなファッションブランドとして期待されている。
アメリカのスタートアップで、サステナブルな靴ブランドのHILOS。発表によると、靴は毎年世界中で約240億足が作られ、その5分の1は使用されずに埋め立てられており、リサイクルされている靴もわずか5％だそうです。同社ではこういった靴の無駄な生産を防止するため、完全オンデマンドで生産。製造には3Dプリンターが用いられ、使用後は簡単にリサイクルできるよう、構造も簡素化されています。また、生産時の水の使用量も、平均的な靴の場合の使用量と比較し99％削減しています。
Kleiderly （ドイツ、ベルリン）
【概要】Kleiderlyは、廃棄された繊維から作られたアイウェアブランド。使用済みの衣料品をリサイクルし、100％リサイクル可能で耐久性のある新素材へと変換する。埋め立てや焼却の際に出る汚染物質やカーボンフットプリントを削減し、環境問題の解決に貢献する。
現在、世界では毎年9,200万トンの繊維廃棄物が廃棄され、その80％以上が埋め立て地または焼却炉に送られています。ベルリンのスタートアップ・Kleiderlyでは、こういった繊維廃棄物をリサイクルし、耐久性のあるプラスチックの代替素材に変換。できた素材から、サングラスなどのアイウェアを製造しています。発表によれば、この代替素材には汚染物質であるアセテートが含まれず、人にも環境にも優しい素材とのこと。ファッション業界のサーキュラーエコノミーとして注目されています。
Nth Cycle（マサチューセッツ州ビバリー）
【概要】Nth Cycleは、リサイクル業者や採掘業者向けに、電子機器の廃棄物から効率的にニッケルやコバルト、マンガンなどのレアメタルを回収する装置を開発している企業。従来の技術より、低コストで回収でき、同社のリサイクルモジュールは小さい面積で簡単に設置できることから、設置することでエネルギー輸送を最小限に抑え、温室効果ガスの排出を抑制できることが期待される。
従来、コバルトやニッケルといった電子機器の廃棄物のリサイクルは、大型の設備が必要だったり、回収する上でCO2が大量に発生したりと、さまざまな問題を抱えていました。アメリカのスタートアップ・Nth Cycleは、こういった課題を解決するため、独自の技術を開発。フィルターによりろ過と電解採取を行うことで、低コストかつ設置面積を大きく削減した効率的な回収を実現しました。
SAVRpak（カリフォルニア州サン・ファン・カピストラノ）
【概要】SAVRpakは、食料品の輸送時に、容器内の水分を最大45％吸収し、おいしさを長持ちさせるパッチ。食品の賞味期限や新鮮さを延長し食品の寿命を延ばすことで、食品ロスを削減する。
SAVRpakは、食品を輸送する際に一緒に入れておくだけで、容器内の水分を吸収し、食品の鮮度が落ちるのを防いでくれる「賞味期限延長パッチ」。同社によると、SAVRpakを食品パッケージに同梱することで農作物の寿命を4日～14日延長できるとのこと。また、テイクアウトフードの容器に同梱することで配達時の余分な水分を吸収し、ふにゃふにゃにならずに出来立て同様の状態を保つことができるようです。また、SAVRpaksは化学薬品を使用せず生分解性とのこと。
以上、「SXSW Pitch」から、"Innovative World Technologies 部門"のファイナリストを紹介しました。気になるプロダクトやサービスがある方、各企業のホームページを覗いてみてはいかがでしょうか。
文：知財ハンター／柴田 悠