No.140
2020.04.29
自動運転の眼となる光レーザー技術
LiDAR(ライダー)
概要
LiDAR(Light Detection and Ranging)は光を利用した検知・測距技術。対象物に向けてパルス状に放ったレーザー光線の散乱や反射から対象物を検知することで「点群データ」と呼ばれる三次元の測量データを取得する。さらにGPSによって計測される位置や時刻を組み合わせてデータ・ビジュアライゼーションを行うことで、対象物までの距離を測るだけでなく、その形状や向きといった性質を分析したりすることができる。
なにがすごいのか?
非常に短い波長の光レーザーによる対象物検知と測距
微小粒子や海底の地形など、様々な対象物を遠距離から測量可能
小型軽量型LiDARは自動車やドローンなどに搭載可能
なぜ生まれたのか?
地形や建造物、森林の構造を測量する際、従来の地上や上空を移動しながら計測する手段では多大な時間と労力がかかっていた。この問題を解決すべく、1990年代より人工衛星や航空機からLiDARを用いた測量が普及したことで、LiDARを車両へ応用しようとする試みも活発化し、自動車関連の特許出願件数が増加していった。
こうして2020年現在、LiDAR業界には各国大手総合部品メーカーや新規参入してきた多くのスタートアップ企業がひしめき合っている。特許出願数で主要なプレイヤーであるデンソーはトヨタ自動車をはじめとした世界各国の自動車メーカーのサプライヤーになることを目指し、GoogleからスピンアウトしたAlphabet傘下のWaymoは、ロボットやセキュリティなど他分野への波及を視野に自動運転技術の開発に取り組んでいる。こういった激しい開発競争の中で業界をリードするのが、他社が本腰を入れるより前の1980年代よりLiDARの研究開発に取り組んでいたVelodyne Lidar, Incであり、カリフォルニア州サンノゼに設立された巨大なLiDAR製造工場によって、競合他社を遥かに上回る生産キャパシティを持つことが特徴。今後も自動運転の普及に伴い、LiDARの市場規模は拡大していくと推測されている。
妄想プロジェクト 妄想プロジェクト
ネオ白杖
「ネオ白杖」は、目の不自由な人が利用する白杖に「LiDAR」を搭載し、周囲の空間把握および障害物を検知し、白杖と連携したイヤホンなどを通じて利用者にアラート信号を送る次世代の白杖である。
これまでの空間把握は杖と利用者の感覚に頼ったアナログなものだったが、「ネオ白杖」があれば正確な測量データから利用者のおかれた状況を伝えることができる。さらに、“白杖”という見た目は従来通りのため、周囲の人からの配慮も得ることができ、目の不自由な人に安全で快適な外歩きを提供できるのである。
実現事例 実現プロジェクト
Velodyne Alpha Prime
LiDAR製造企業のVelodyne Lidar, Inc.は、2019年11月、最新の全方位レーザーLiDARイメージングユニット「Alpha Prime」を発表した。自動運転をはじめとする先端運転支援システムに特化しており、水平全方位360°の128個のレーザー送受信センサによって、毎秒約240万個の点群取得と約250メートル先までの測距がリアルタイムに可能となった。
Trombia Free
「Trombia Free」は、LiDARとマシーン・ヴィジョンを搭載し、自律運転で障害物を避けつつ、どんな天候下でも活動できる屋外用の大型ロボット掃除機。通常の最高時速は8kmだが、清掃作業では時速2〜6kmで進み、従来の清掃車の15%程度の電力となる10kWで路上を綺麗にする。清掃に使う水は少量で良く、加えて電動なので静かな上、排気ガスなどを出さないのが特徴だ。
なぜできるのか?
光による距離の計測
LiDARと対象物間の距離を、発光した時刻と反射した光を受けとる時刻との時間差から求める。
様々な微小粒子まで検出可能
レーダーの電波よりも短い波長の電磁波(光の束、レーザー)を用いることで、エアロゾル、雲、大気の分子といった微小粒子の検出が可能。様々な波長のレーザーを上手に組み合わせれば、散乱光の強度と波長との関係から大気組成を知ることもできる。
遠距離から風速を計測
散乱光の波長の変化(ドップラーシフト)をもとに、遠距離から風速を計測できる。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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