No.154

2020.07.17

日本から発祥した言語フリーの象形文字

Emoji(絵文字)

emoji

概要

絵文字は、日本のケータイ文化から生まれ、今や世界的に普及したデジタルコミュニケーションツール。顔、物、場所などを表現した文字によって直感的な非言語的コミュニケーションを可能にする。従来のデジタルコミュニケーションではしばしば、声色・口調・表情・ジェスチャーなどの非言語表現を加えられず、予期せぬ誤解が生まれることもあったが、絵文字は文字だけのコミュニケーションでは難しかった点を補完している。将来的には、文字と絵文字が相補的に進化し、人類の表現の幅を広げていくことが期待される。

なにがすごいのか?

  • 言葉で表現しにくいニュアンスや気持ちを伝達

  • 字数制限のあるメディアでの効率的な表現

  • 言語や世代を超えたアイデアや感情の共有

なぜ生まれたのか?

1995年頃ポケットベルで「ハートマーク」が導入されて以来、携帯電話端末での絵文字の文字としての用途が認識され始めた。やがてポケットベルの流行も終焉を迎えかけていた1999年、携帯電話からインターネット通信ができる世界初のサービス「iモード」がNTTドコモから発表された。ハートマークの事例から絵文字によるコミュニケーションの可能性に気づいていた、当時のiモード開発チームの一人、栗田穣崇氏は、12ピクセル×12ピクセルの極小空間に顔、物、場所などを表現した絵文字全176種類を企画・導入した。これを起点として、他キャリア含む日本の携帯には、絵文字が欠かせないものとなっていった。

2006年には日本の携帯メールとGmailでやりとりする際に絵文字を送受信したいというニーズから、Google日本法人のGmailチームが絵文字プロジェクトをスタートさせ、2008年には日本の携帯電話の絵文字をUnicodeに加える計画を公表し、世界中に絵文字が普及するきっかけとなった。現在、栗田氏による世界初の絵文字はニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久所蔵品として他の芸術作品と同じように展示されており、毎年7月17日は「World Emoji Day」(国際絵文字デー)として制定されている。

実現事例 実現プロジェクト

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絵文字のユニバーサルデザイン

多様な人種や性への理解が深まりつつある現代。20年以上の歴史を持つ絵文字にも多様化の波が押し寄せている。

2019年には世界絵文字デーを記念し、米Apple社が新しい絵文字を発表した。これら230種の新しい絵文字には、性別のない絵文字やカップルで肌の色と性別の組み合わせが異なる絵文字といった人種や性に関する絵文字、さらには車椅子に乗る人、白棒を持って歩く人、盲導犬といった障害者に関する絵文字が含まれている。

多様性を表現するユニバーサルデザインとしての絵文字は、今後ますます普及していくことだろう。

なぜできるのか?

複雑な表現を可能にするタテ型絵文字

絵文字の内、既存の文字や記号だけを組み合わせて表現した顔文字である「エモティコン」は、顔全体を横倒しにした状態で表現されるため複雑な表現を苦手とする。対して日本発祥の顔文字は、文字と同じくタテ型で表現され、半角記号だけでなく半角カナや全角記号まで使って表現されるため、複雑な表現を得意とする。

Unicodeに採用

2010年にはUnicode 6.0で絵文字 (Emoji) が新たに追加され、パソコンやスマートフォンなどで世界的に対応されたことから日本国内だけでなく世界中で利用されるようになった。

相性のいい産業分野

メディア・コミュニケーション

Twitter上で使用される絵文字の使用頻度をリアルタイム表示することで、国際情勢に対する世界中のTwitterユーザーの情動を可視化

生活・文化
  • 有事の際の連帯の印としての絵文字(パリ同時多発テロ後の「私はシャルリー」が好例)

  • TPOによってフォーマル絵文字とカジュアル絵文字などの異なるタイプの絵文字を使用

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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