No.453
2021.10.19
砂粒大の飛行するマイクロチップ
マイクロフライヤー
概要
「マイクロフライヤー」は、人口飛行物としては世界最小の飛行するマイクロチップ。大きさは砂粒程度でプロペラのような形状をしており、風をとらえてヘリコプターのように旋回しながら飛行する。開発にあたり、研究者らは植物の種子の風散布メカニズムを研究し、風で散る空気力学を「マイクロフライヤー」の翼の設計に応用。センサーや無線通信用アンテナ、データ保存のためのメモリやバッテリーなどが搭載可能で、大気汚染や環境汚染、空気中の感染性疾患のモニタリングなど多方面での活用が見込まれている。
なぜできるのか?
人工物では史上最少の「空飛ぶマイクロチップ」
大きさは砂粒大で、人口飛行物としては史上最少。3つの翼とミリサイズの電子機能コンポーネントなどで構成されており、エンジンやモーターは使用せず翼で風をとらえてゆるやかに飛行し、ヘリコプターのようにくるくると旋回しながら着陸する。
散布型種子の空気力学をメカニズムに応用
「マイクロフライヤー」の開発にあたり研究チームがヒントにしたのが、カエデやコウシュンカズラといった植物の風散布型種子。風に乗って飛行し回転しながらゆるやかに落下する種子のメカニズムを模倣するべく、空気が「マイクロフライヤー」の翼周辺をどう流れるのかを計算モデリングによって明らかにし、安定した軌道で風に乗って飛行を続けられる設計を実現。これにより、自然界のものよりも安定した軌道で、着地速度のゆるやかな構造の構築に成功した。
大気汚染のモデリングなどへの活用
長時間、広範囲にわたって飛行することができる「マイクロフライヤー」にはセンサーや無線通信用アンテナ、データ保存のためのメモリやバッテリーなどを搭載することが可能で、大気汚染や環境汚染、空気中の感染性疾患のモニタリングなどへの活用が見込まれている。また、研究チームは散布後の「マイクロフライヤー」の回収が困難であることも想定し、材質には水で溶解する無害な水分解性材料を用いる開発を視野に入れている。
相性のいい産業分野
- 環境・エネルギー
pHセンサーを搭載して水質測定、大気汚染の測定や、光検出器を搭載し日光曝露量を計測
- 医療・福祉
大気をモニタリングすることで疾患の空気感染のメカニズムを解明
- IT・通信
恒常的に飛行可能な仕組みとWifiを搭載することで世界全体をWifiフリースポット化
- 航空・宇宙
センサーが大気の流れと一体化することで大気や気象のメカニズムといった計算では予測しづらい複雑系の研究に応用可能
- アート・エンターテインメント
大気の流れをモデリングし3Dプリンターで形状に落とし込むことで唯一無二の有機的な彫刻作品を制作
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top images:© Northwestern University