No.480

2021.11.05

葉に蓄えた光を暗闇で放出する植物

発光植物 by マサチューセッツ工科大学

mit-glowing-plants-super-169

概要

「発光植物 by マサチューセッツ工科大学」とは、植物の葉に特殊なナノ粒子を埋め込み、LEDをあてることで光を蓄えることができる発光植物。10秒間光を溜めこむと数分間明るく輝き、繰り返し光を蓄えることも可能である。同研究チームが2017年に発表した第一世代の発光植物と比べ、10倍の明るい光を放つ。バジル、クレソン、タバコといった植物で発光できることが確認されており、将来は街灯などにも応用されることが期待されている。

Rechargeable-Light-Emitting-Plants-720x370

なぜできるのか?

植物ナノバイオニク

ナノテクノロジーを利用して植物に新たな能力を持たせる「植物ナノバイオニクス」の研究によって生まれた。同研究チームが2017年に開発した葉が光る植物は、ホタルや深海魚などの生物発光の源であるルシフェリンと、それに作用するルシフェラーゼという酵素を葉に注入したもの。発光に必要なエネルギーは植物自身の代謝で生み出され、光の量は文字などを読むために必要な量の1000分の1ほどだった。この技術を改善し、新たに葉に埋め込んだナノ粒子で光を蓄え、暗闇の中で光を放出する植物を開発した。

持続時間と光量

バジル・クレソン・タバコ・デイジーなど、さまざまなサイズの植物でナノ粒子を試した結果、ナノ粒子は太陽光やLEDライトの光を光子の形で蓄え、時間と共に放出できることが確かめられた。青色LEDの光に約10秒間さらされた植物は最大1時間にわたって発光し、最初の5分間で特に明るい光を放つ。光の強さは2017年に同研究チームにより開発された植物の10倍で、個々の葉は約2週間にわたって光を当てて「再チャージ」することができた。ナノ粒子を注入された植物は、10日間にわたって正常に光合成を行い、気孔を通じて水分を蒸散できることも確認された。

蓄光性のナノ粒子

新たに開発されたナノ粒子は、ストロンチウムとアルミニウムを含む無機化合物のアルミン酸ストロンチウムを利用。アルミン酸ストロンチウムは可視光線と紫外線を吸収し、光として放出できる蓄光性の蛍光体であり、時計の文字盤や計器盤、誘導標識などの蛍光に使用されているもの。研究チームは、ナノ粒子に成形したアルミン酸ストロンチウムを損傷から守るためにシリカでコーティングし、植物が呼吸や蒸散で気体の交換を行うための穴である気孔から注入した。直径わずか数百ナノメートルのナノ粒子は、気孔を通って葉肉の海綿状組織にある隙間に薄膜として蓄積している。

相性のいい産業分野

住宅・不動産・建築

屋内施設や住宅における照明の代替や、街灯としての使用

流通・モビリティ

明かりが不十分な田舎の山道などを、外観を崩さないまま発光

旅行・観光

山や森で意図的に発光植物を育成することで新たな観光資源としての夜景を創出

アート・エンターテインメント

夜間限定で開放される「光る植物園」

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。

Top Image : © マサチューセッツ工科大学