No.517
2021.12.01
特定の人の耳元にだけ音声を送れるレーザー
レーザー光線音響技術 by MIT
概要
「レーザー光線音響技術 by MIT」とは、水蒸気が光を吸収して膨張し、音波が形成される現象を用いた音響技術。この現象を利用し、2.5mほど離れた場所にいる人の耳に、受信機器がなくてもレーザー光線で直接音声を届けることができる。レーザー光線の出力を変調して、より明確にメッセージを伝えることも可能で、今後、屋外での使用や、より離れたところにも使用できることを目指している。極度にターゲットを絞った相手に音声信号を空中送信できるこの技術は、騒音の大きな場所で直接音を届けたい相手に届けたり、危険な状況にいる個人へ直接警告音を聞かせたりなどの活用が期待される。
なぜできるのか?
光エネルギーと水蒸気を利用
受信者の周囲にある水蒸気がレーザーの光が当たることで膨張し、水蒸気は膨張により音波を発生する「光音響効果」を利用する。物質に光を当てると、物質は光のエネルギーを吸収し熱を放出。熱は受信者の周りにある水蒸気の体積を膨張させ、音波を発生させる。結果、2.5mほど離れた場所にレーザーで60dBの音量を発生させることができ、受信機器を用いずレーザーで直接音を届けることが可能となる。
個人をターゲットにした音声送信
レーザー光線による「光音響効果」の音の送信の特徴のひとつは、音声が送信者から一定の距離でのみ聞こえる点にある。そのため発信源と相手の中間で音が聞こえることはなく、レーザーが受信者に届く前に他の人に当たっても、その相手が適切な距離にいない場合は音声として再生されず、特定の相手をターゲットにした音声の送付が可能。レーザーは目や皮膚に当たっても安全なレーザーを用いている。
レーザー光線の出力の変調で調整
レーザー光線の出力を変調して、より明確にメッセージを伝えることも可能。今後、屋外での使用や、より離れた場所にいる相手にも使えるように研究を重ねる。
相性のいい産業分野
- 生活・文化
騒音の多い場所での音声コミュニケーション
- メディア・コミュニケーション
特定の人にのみ音声を届けるピンポイント・ターゲティング広告
- IT・通信
銃猟者など危険な状況の個人への音声警告
- アート・エンターテインメント
相手にだけ聞こえる囁き声をレーザービームで送信
- スポーツ
試合中の選手への遠隔サインに活用
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © MIT’s Lincoln Laboratory