No.551
2022.01.06
繊細な「人の手」を再現するロボットハンド技術
マニピュレーター by SONY
概要
「マニピュレーター by SONY」とは、ロボットが未知の物体を安定かつ迅速につかみ、動かすためのロボットハンド技術。手の中に設置された168個の触覚センサーで、手の内にある物体の壊れやすさ、正確につかむ力の大きさを感知し、独自のアルゴリズムに従って握る強さを算出することで、花やケーキなど柔らかいものでも滑り落とさず優しくつかむことができる。従来のロボットは未知の物体への物理的な接触を不得手としていたが、本技術は未知のものも触覚センサーで物をつかむ力加減を求め、力をコントロールすることが可能。将来、介護分野で実証実験が予定されており、また物流や製造現場作業だけでなく家事支援や商品陳列などのサービス領域へと、ロボットの応用シーンをさらに拡げる技術として期待されている。
なぜできるのか?
触覚センサーで対象物の位置を正確に把握
ロボットが物体をつかむ際は通常、俯瞰カメラの映像を頼りにアームとハンドをマニピュレーション(操縦・操作)するのが一般的だが、カメラ越しの情報のため距離感を把握しきれず、物体をつかみ損ねる場合がある。こうした問題に対して本技術では、ハンド自体に複数の接触センサーを搭載することで物体の存在を的確に検出し、正確な位置を把握することが可能となった。
滑り方を数理モデル化
ロボットが物体をつかむ場合、物体が壊れない力でつかみ、手から滑り落ちない力を制御することが重要なポイントとなるが、力の滑る方向や力の大きさが一定ではなく、制御が難しいとされる。そこで本技術では数理モデルにより物体の滑りの解析を行い、最適なセンサー構成や制御アルゴリズムを導出。機械学習ではなく物理的な数理モデルに従って処理することで、さまざまな対象やパターンでもつかむ力の適切量を求める対応が可能になった。
あらゆる産業の物理的接触に応用
ロボット業界では、産業用ロボットの拡大に次いで、医療やサービス、教育といったさまざまな分野へのロボットの導入が予想されている。物体を把持する力を自らコントロールする「力制御ロボット」は今後、物流、製造現場やサービス領域など、人間や対象物、環境との物理的接触が必要となるシーンでの活用が期待されている。