No.570
2022.01.27
99.99%の超高純度で廃電池からリチウムを回収
リチウム回収装置 by 量子科学技術研究開発機構
概要
「リチウム回収装置 by 量子科学技術研究開発機構」とは、使用済みリチウムイオン電池から99.99%の高純度でリチウムを回収できる装置。日本は現在リチウムを100%海外輸入に頼っているが、この技術を用いることで輸入平均価格を下回る製造原価で電池原料となる水酸化リチウムを回収することができる。この研究により、電気自動車(EV)社会の推進や電池製造のみならず、廃電池リサイクル時のCO2排出低減を通じてカーボンニュートラルの実現へ貢献するとともに、国内リチウム資源循環構築にもつながることが期待されている。
なぜできるのか?
量研独自の「イオン伝導体リチウム分離法(LiSMIC)」
開発元の量子科学技術研究開発機構(量研)では、核融合の燃料にリチウムが必要であることからリチウム回収技術「イオン伝導体リチウム分離法(LiSMIC)」を開発。これはリチウムを含む原液とリチウムを含まない回収溶液間をイオン伝導体の分離膜で隔離し、分離膜に電圧を加えることで原液に含まれるリチウムを濃縮回収する方法で、使用済みリチウムイオン電池の処理溶液のほかに、海水、塩湖かん水、にがりなどからリチウムを回収する方法として期待されている。
高性能イオン伝導体20枚を積層
「リチウム回収装置」ではリチウム分離膜であるイオン伝導体20枚を積層。使用済みリチウムイオン電池を加熱処理(焙焼)して得た電池灰(ブラックパウダー)を水に浸した水浸出液から溶けだしたリチウムイオンを分離膜で分離・精製する。試験装置では、14日間の稼働で電池灰の水浸出液に含まれるリチウムの約8割を回収することに成功した。
リチウムを低価格・高純度で回収
水浸出液からのリチウム製造原価を試算したところ、リチウムの輸入平均価格(2020年度貿易統計の輸入平均価格1287円/kg)を下回るコストで電池原料となる水酸化リチウムを回収できることが判明。電池灰の濃度を極限まで引き上げることで、リチウムの輸入価格の半分以下の製造原価で回収も見込めるという。
リチウムを海水から直接回収することも可能
この技術により、これまでコスト面で困難とされてきた車載用大型リチウムイオン電池の工業的なリサイクルが可能となるほか、リチウムが燃料となる核融合の早期実現にも貢献する。また、本技術は、リチウム含有溶液に広く適用できることから、リチウムそもそもの供給源である塩湖かん水からの直接のリチウム回収の実用化に研究が進んでいる。さらに開発元の量研では、海水からのリチウム回収技術の確立による無尽蔵のリチウム資源の確保を目指し研究開発を進めている。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
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