No.571

2022.01.28

ヒトにも応用可能な、傷あとが残らない再生治療

イモリの皮膚再生メカニズム

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概要

「イモリの皮膚再生メカニズム」とは、イモリが生まれながらに有する皮膚の完全再生能力であり、それをヒトへの医療に応用するための研究である。人間の皮膚は、体内の水分や体温の制御などさまざまな機能と役割を有しており、真皮を含む皮膚全層が失われると損傷した部位の皮膚のきめや汗腺や脂腺、色合いは完全には回復せず、そのダメージは人のQOL(生活の質)に大きな影響を与える。さまざまな臓器を生涯にわたり何度でも完全再生できるイモリの「無瘢痕治癒能力」の仕組みを解明し、人間の肌治療へ応用することで、傷あとが残らない新たな外科医療の開発につながることが期待されている。

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なぜできるのか?

ヒトにはない、無瘢痕治癒能力

傷あとが残らない再生治療(無瘢痕治癒)は外科学や美容医学において皮膚の傷を治す理想的な方法と考えられているが、ヒトを含む四肢動物は一般に、変態や孵化、出生を経ると、組織や臓器の再生能力を失ってしまう。そこで、その生涯にわたり体のさまざまな部分を何度でも再生でき、これまでその仕組みがほとんど明らかにされていなかった「イモリ」に着目して研究は進められた。

「アカハライモリ」を用いた実験と調査

この研究ではアカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)の成体を用いて、体のさまざまな部位から表皮と真皮を含む皮膚全層を切除し、その再表皮化や線維化の有無、肌理(きめ)の回復、分泌腺など皮膚付属器の回復、色(色相・色調、模様)の回復について調査。その結果、成体イモリは、傷周囲の表皮幹細胞の分裂頻度をほとんど高めることなく素早く傷口を閉じ、同時に炎症反応を低く抑えることで、最終的に瘢痕のない皮膚を再生することが判明した。また、時間はかかりながらも、肌理や皮膚付属器、色合いも回復した。一方、腹の皮膚については、赤と黒の模様が傷つく前とは別の模様になってしまい、完璧に再生できないことが明らかとなった。

イモリの再表皮化原理

イモリは傷周囲の表皮に新たな細胞が付加されることで、増加分が傷口に押し出されていき、傷口を素早く閉じることができることが判明。肉芽形成の結果生じる線維化が瘢痕が残る原因であると考えられていることから、イモリのユニークな再表皮化原理を人間の医療へ応用することで、瘢痕化の回避につながる可能性がある。

相性のいい産業分野

医療・福祉

イモリの皮膚再生メカニズムを皮膚再生医療に応用

製造業・メーカー

イモリの皮膚再生メカニズムを応用したシミ・くすみを残さないスキンケア商品

生活・文化

真皮まで再生できるイモリの皮膚再生技術で消したいタトゥーを消去

スポーツ

アスリートのケガや傷をイモリの皮膚再生メカニズムをもとに治すことで早期復帰を支援

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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