No.600
2022.02.16
Wi-Fi信号で果物の状態を切らずに測定
Wi-Fruit(ワイフルーツ)
概要
「Wi-Fruit(ワイフルーツ)」とは、Wi-Fiを利用して果物の中身の状態を測定するシステム。果物内部が傷んでいるかどうかを正確に判断するには果実の水分量とSSC(可溶性固形分)を測定する必要があるが、従来の測定機は果物を切る必要があったり高額な設備が必要だったりと、手軽な計測ができなかった。一方「Wi-Fruit」ではWi-Fi信号から果実の電気特性を割り出し、果物の水分量とSSCを遠隔で推定。非破壊かつ低コストで高精度な測定が可能となる。果皮が厚いもの(スイカやグレープフルーツなど)から薄いもの(ドラゴンフルーツやリンゴ、梨、オレンジなど)まで幅広く測定できることから、様々なシーンでの活用が期待されている。
なぜできるのか?
Wi-Fi信号の変化から果肉の成分を判定
「Wi-Fruit(ワイフルーツ)」では、送信機にWi-Fiルーター、受信機にPCやスマートフォンを使用。果物が送信機と受信機の間に置かれると、受信機のPCがWi-Fi信号の振幅や位相の変化を表したチャネル状態情報(CSI)を取得し、果肉を通過した信号から電気特性を測定する。
二つのモジュールから構成された推定システム
受信側の推定システムでは、前処理として受信信号のノイズを除去して果物や環境に対する互換性を確保したのち、3層の軽量人工ニューラルネットワーク(ANN)でセンシング情報と果物の視覚情報(大きさ、形状、種類など)を取得。果物の水分量とSSC(可溶性固形分)を推定する。
環境や種類を問わず高精度な推定が可能
実験では、何もない実験室と大量の本が並ぶ図書館で1か月にわたり6種類の果実(スイカ、グレープフルーツ、リンゴ、ドラゴンフルーツ、オレンジ、梨)の水分量とSSCを測定。その結果、環境や果物の種類によらず、高精度な推定結果が得られることが分かった。