No.722
知財図鑑関連アワード受賞知財
2022.06.03
倫理的ジレンマから人間の命の捉え方や正しい倫理観について検討
トロッコ問題における多角的考察
概要
「トロッコ問題における多角的考察」とは、“命の選別”をめぐる倫理的ジレンマ「トロッコ問題」の検討を通して、人間の命に対する認識や正しい倫理観・正義感について考察した研究論文。考察にあたっては、法学や脳科学などの分野の異なる複数の専門家や人工知能の意見を比較した上で、コロナ禍での病床不足やAIによる自動運転技術といった社会問題を検討した。加えて本稿では、これらの考察をもとに先進国と発展途上国の医療体制の違いについても考察した。社会学者の大澤真幸氏の意見を参考に、トロッコ問題にはない現実世界の特徴として「新しい選択肢を構築できる」点について触れている。現実世界ではトロッコ問題のような二択だけでなく、空を飛んだり地下を潜ったり、新しい道も開拓できるため、二択だけに思考を縛られることなく、自由闊達に想像する力と積極的な姿勢が肝要だと筆者は考えた。本稿は確かに明確な答えを提示したものではないが、それは明確な答えのない問いゆえに、答えではなく思考プロセスを重視しているからであり、あれこれと多角的・徹底的に考え続ける姿勢は、各人が哲学的思考を展開し、正しい倫理観を養う糸口に繋がる研究論文となっている。
(論文:「トロッコ問題における多角的考察」)
なにがすごいのか?
「トロッコ問題」から、自動運転やパンデミック下の”命の選別”といった広範な事例を検討
分野の異なる専門家や人工知能の意見を丹念に検討し、「トロッコ問題」の複雑さを多角的に考察
「トロッコ問題」を起点に人間の倫理観・正義感といった命題に思いを巡らせる洞察の深さ
不可測な時代において、答えのない難問にも対応できる「哲学的思考」育成の重要性
なぜ生まれたのか?
著者の太田真爾氏は、世界的な問題になっている新型コロナウイルス感染者の急増に伴い、全国で医療崩壊が発生し“命の選別”が起きている事態に心を痛めた。 そして、この問題が「トロッコ問題」をより複雑化した問題であると解釈した。さらに今後、人工知能の台頭が予想される情報社会において、明確な答えのない哲学的命題についても屈せずに考え続ける姿勢が重要だと考え、本研究に着手した。
なぜできるのか?
一つの問いを多角的視点から検討する重要性
著者の太田真爾は、トロッコ問題の検討にあたり、法学や脳科学、社会学といった専門家の意見や、人工知能の意見をもとに比較・考察を行った。同様に、読者は本研究から一つの問いに対して複数の視点から多角的に検討することの重要性が学び取ることが期待できる。
読者の哲学的思考を養成
本研究では、「トロッコ問題」という倫理的な難問に対して徹底した思考を展開している。そのため読者は、本研究を通して、先行きの見えない時代においても答えのない問いに粘り強く思考する力を育成できることが期待できる。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。
Top Image : © Getty images