No.723

知財図鑑関連アワード受賞知財

2022.06.03

“倫理的な消費”のあり方を問い直し、消費・生産に伴う責任の重さを指摘

エシカル消費に対する社会貢献的意識の実態

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概要

「エシカル消費に対する社会貢献的意識の実態」とは、エシカル消費に対する社会貢献的意識について、エシカル消費に取り組む企業・有識者への取材や、テキストマイニングの手法を基にしたエシカル消費に言及した書籍の分析で、そのあり方を厳しく問うた研究。リサーチの結果、エシカル消費によりいかに社会貢献できるのかの社会的評価や顕示が重要視され、“消費者が自身の消費行動に責任を持ち、環境や社会に配慮した商品を購入する“という本来の意味がないがしろにされていることを明らかにした。また、この結果を踏まえて、本論文では、消費者として果たすべき最低限の「責任」と、消費行動の先にある「社会貢献」を区別して考える必要があると指摘。エシカル消費に対する向き合い方を是正し、企業・消費者双方のより良い消費行動を促す研究として期待される。
(論文:「エシカル消費に対する社会貢献的意識の実態」)

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yui akahori - Yui Akahori p17

なにがすごいのか?

  • 肯定的に語られがちなエシカル消費の問題点を厳しくまとめるという研究の新規性

  • 企業・消費者双方の消費活動の在り方に一石を投じる問題意識の高さ

  • エシカル消費にまつわる書籍のテキストマイニングや企業へのインタビューなど、広範囲にわたる綿密な調査

なぜ生まれたのか?

赤堀結氏と畑香澄氏は、中学3年生の時にエシカル消費の啓発を目標とした研究を開始。以来、エシカル消費にまつわる様々なイベントに参加してきたが、消費の背景にある社会問題が度外視され、肯定的な面ばかりが強調されるエシカル消費の捉えられ方に次第に疑問を抱くようになった。サステナビリティに対する気運が高まりつつある現代社会において、こういった状況が表層的なエシカル消費を促進させる原因になりかねない。エシカル消費が普及しつつある現代だからこそ中身の伴ったエシカル消費を確立させる必要があると考え、本研究を始めた。

なぜできるのか?

さまざまな手法での調査

著者の赤堀結氏と畑香澄氏は、エシカル消費の実態を調査するために、関連書籍のテキストマイニング(10冊)、積極的にエシカル消費に取り組む企業の企業理念の調査(9社)および企業へのインタビュー(4社)、有識者へのインタビュー(2名)を実施。読者は、本研究を通して「エシカル消費」の現状を多角的な視点から総体的に把握できる。

エシカル消費の正しいあり方を指摘

本研究では、エシカル消費の実態調査を通じ、現状のエシカル消費はいかに社会に貢献できるのかが誇張され、ユーザーの消費・生産の責任を度外視される傾向があることを突き止めた。そのため企業やユーザーは、本研究からより正しいエシカル消費の在り方を学び取ることが期待できる。

相性のいい産業分野

教育・人材

学校でエシカル消費を教えることで生徒の健全な消費者意識を育成

生活・文化

正しいエシカル消費の在り方を消費者に訴求

環境・エネルギー

エシカル消費の本来の目的を浸透させることでサステナブルな消費行動を促進

製造業・メーカー

社会貢献だけでなく消費者としての責任を重視したエシカル消費を推進

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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