No.941

2024.11.22

身体機能に制限がある人もバトルできるeスポーツ

ALL PLAYERS WELCOME -Super Inclusive Gaming-

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概要

「ALL PLAYERS WELCOME -Super Inclusive Gaming-」(以下、「Super Inclusive Gaming」)とは、身体機能に制限がある人もバトルできるeスポーツ。少しの動きでスイッチ操作可能な仕組みを構築しており、筋ジストロフィーなどの疾患で身体動作が制限されている人も、eスポーツのプレイヤーとして競技に参加できる。筋の微細な動きでゲームを操作する技術も開発し、身体機能の制限有無に関わらずバトル可能。世界各国のあらゆるプレイヤーと対戦できる。eスポーツ領域だけでなく、VR・メタバースでのアバター操作やメディアアートなど、多方面への展開が期待される。

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なぜできるのか?

誰でもプレイヤーになれる環境構築

「Super Inclusive Gaming」は、オンラインを通じて国内外から誰でも参加できる。世界最大級の広告祭「Cannes Lions 2024」では、会場でゲームバトルのライブを公開。日仏をつなぎ、特殊な車を操作してサッカー対戦するゲーム「ロケットリーグ(開発元:Psyonix)」でバトルした。日本からは、筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症で身体動作に制限がある3人のプレイヤーが参加。プレイヤーによっては、弱い力や少しの動きで操作できるデバイスを活用して競技に加わった。現地では、会場メンバーが自身の筋の動きでゲーム操作するデバイスを通じて応戦した。

「ALL PLAYERS WELCOME」プロジェクト

身体に障害がある人の視点・創造力を借りながら、誰もが表現できるツールや環境をつくることを目的としたプロジェクト「ALL PLAYERS WELCOME」がベースにある。立ち上げたのは、テクノロジーとアイデアで表現開発や社会課題の解決に取り組んでいる電通のR&D組織、Dentsu Lab Tokyo(現Dentsu Lab)。組織活動の中で、パラアスリート・パフォーマーの視点やクリエイティビティに触れ、その力を享受することで世界はもっと良くなるとして、2022年6月よりプロジェクトを開始。2023年ころからNTT人間情報研究所との連携も始めた。過去には、ALS(筋委縮性側索硬化症)のアーティストと共同で、視線や筋の動きによる演奏装置を開発。「Super Inclusive Gaming」は、ゲームなどで誰でも使える汎用インターフェースとして構築した。

「Project Humanity」の開発技術

「ALL PLAYERS WELCOME」の一環で進めている研究開発プロジェクト、「Project Humanity」の技術を活用した。NTT人間情報研究所の技術力とDentsu Lab Tokyoのクリエイティビティを掛け合わせたプロジェクトで、ALSなどの障害がある人々のコミュニケーションをより豊かにすることを目指している。これまで、ALSで失われる声を再現する音声合成技術の開発などを推進。また、非言語表現の1つと位置づけ、筋活動でスイッチなどを操作する運動能力転写技術を開発した。転写技術は、センサーを装着して自身の微細な筋活動から生体情報(筋電データ)を取得し、操作情報に変換する。「Super Inclusive Gaming」では、現地メンバーが同技術を用いてゲームバトルに参加した。

相性のいい産業分野

スポーツ

パラリンピックのようなeスポーツの世界大会の開催

IT・通信

身体機能の制限状況に応じてゲームプレイをフォローするAIの開発

メディア・コミュニケーション

アバターで交流・パフォーマンスなどができるプラットフォームの構築

医療・福祉

身体機能を失ってしまった人のリハビリやメンタルコントロールなどに活用

ロボティクス

デジタルデータでロボットの機体を操作してリアル対戦

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。

Top Image : © Dentsu Lab Tokyo