No.916
2024.09.18
味の時間変化を制御できるスプーン型調味デバイス
Chronospoon:時を操る調味食器
概要
「Chronospoon: 時を操る調味食器」とは、味の時間軸の変化をコントロールできるスプーン型調味デバイス。小型タンクを搭載した調味機構とスプーンの着脱機能を備えた装置で、混合した味溶液を食品に添加して、ひと口ごとに味の時間経過(順行)や逆行を制御する。味の変化を数式モデル化して再現する研究をベースに、待ち時間が少なく、個々人が手軽に使える食器型デバイスを構築した。賞味期限の延長や食品ロスの削減を促すとともに、時間軸の変化を楽しむ新たな食体験を提供するなど、食領域の概念を拡張すると期待されている。
なぜできるのか?
スプーン型装置の開発
味の時間変化に必要な混合液をスプーン内に滴下して味を制御する、全長約20㎝のスプーン型装置を開発した(※)。5mlのシリンジ(注射筒)を1つ搭載し、順行・逆行を再現する一定比率の混合液を収容。入力インタフェースとしてブッシュスイッチ付きツマミを設置し、ツマミの操作で内部のモーター・ねじを動かして、液体の押し出しを制御する。シリンジは約2秒で交換できるカートリッジで、食品や用途に合わせて選択・装填可能。コンタミネーション(混入)防止や、とろみのある液体のつまりにくさも施している。また、容積約8mlの使い捨てスプーンを着脱・交換できる構造を、機構下部に搭載。手元の操作で、スプーン内の少量の味をすぐに・手軽に変化させるデバイスを構築した。(※特許出願済み)
「味のタイムマシン技術」の研究
食品の味を時間軸で変化させる「味のタイムマシン技術」の研究・開発がベースにある。味覚センサーによる実測などを通じて、味と時間の関係ー特に熟成過程を数式でモデル化。現状の味と設定日時に推定される味との差をもとめ、順行・逆行に必要な添加物質の量を割り出して調味している。これまで、味溶液のタンクを20基搭載した調味家電などを中心に研究を進めてきたが、個々人が手軽に使えるデバイスとして、食器に調味機能を持たせた「調味食器」の開発に着手した。5種類のタンクを搭載したスプーン・フォーク型のプロトタイプ開発を経て、サイズや重量を改良。タンク1つ・小型・軽量の「Chronospoon」の開発に至った。研究では、トマトとカレーで味の精度を検証し、順行・逆行いずれも再現性を確認。食品ごとの再現性の違いを考慮し、継続的な研究を進めている。
相性のいい産業分野
- 食品・飲料
混合液の添加を想定した味を拡張できる食品の開発
- 環境・エネルギー
フードロスを減らして廃棄・流通に伴う環境負荷を削減
- 教育・人材
食品の熟成や時間経過に伴う味の変化を学ぶ教材に活用
- アート・エンターテインメント
個人の好みに合わせて味を調整できるパーソナライズサービスとして提供
- 資源・マテリアル
逆行の調味を含めて賞味期限の基準を改定
この知財の情報・出典
特許出願済
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © Miyashita Lab