No.935

2024.11.08

沿線全体でホテルの世界観を構築する地域活性化プロジェクト

沿線まるごとホテル プロジェクト

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概要

「沿線まるごとホテル プロジェクト」とは、鉄道の沿線エリア全体でホテルの世界観を構築する地域活性化プロジェクト。駅の施設をホテルのフロント・ロビーとして用い、沿線の空き家をホテル客室に改修するなどでホテルの世界観を構築して、新たな地域滞在型観光を創出する。過疎高齢化や乗降客数減などの課題を持つJR青梅線沿線で、地域住民・事業者とともに資源を発掘し、エリア全体をホテルに見立てて編集することで、新たな観光サービスを生み出している。青梅線沿線の活性化とともに、全国の過疎高齢化が進む地域への展開が期待される。

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なぜ生まれたのか?

「JR東日本スタートアッププログラム2020」をきっかけに取り組みが始まった。同プログラムは、駅・鉄道などのJR東日本グループの経営資源を活用したビジネスアイデアを募り、事業化を目指す取り組み。JR東日本スタートアップ株式会社を中心に2017年から実施しており、ベンチャー企業や個人などが参加できる。さとゆめは2020年度に「『沿線まるごとホテル』による無人駅からはじまるマイクロツーリズムの実現」というテーマでアイデアを応募し、採択された。2021年2月~4月には、集落体験や古民家ステイを提供する実証実験を実施。予定数完売と高い評価を得て、本格的な事業化に至った。

事業化にあたり、2021年11月にJR東日本とさとゆめの共同出資会社「沿線まるごと株式会社」を設立。2024年5月には、中核施設となる「Satologue(さとローグ)」のレストランとサウナを先行オープンした。レストランは古い木造家屋を改修、同敷地内の倉庫を改築して薪サウナを設置し、水風呂には川の水を引き込んだ。その他は順次開業予定で、宿泊棟は2025年春ごろのオープンを予定している。

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sub14 レストラン「時帰路(TOKIRO)」で帝京される、土地のストーリーを料理に込めた「沿線ガストロノミー」

なぜできるのか?

沿線全体をホテルに見立てるコンセプト

プロジェクトでは、「沿線をまるごと楽しめるホテルのようなサービス」を創ることを目指している。JR青梅線の無人駅の駅舎や鉄道施設をホテルのフロント・ロビーとして活用。沿線集落の空き家(古民家)を改修してホテルの客室とし、地域住民(移住者含む)がホテルのキャストとなって接客・運営を担う。プロジェクトのベースには、2014年からさとゆめがプロデュース・伴走支援した山梨県小菅村の分散型古民家ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」がある。「700人の村がひとつのホテルに」というコンセプトで、2019年に開業。地域の古民家を客室に改修し、2024年時点では3棟6室を展開。村人が施設運営を担っている。

地域と人に寄り添うプロジェクト展開

アイデアを発案したさとゆめは、伴走型コンサルティングをモットーに、全国40エリアで事業創出を牽引。戦略や計画策定で終わることなく、商品・サービスや雇用につながるまで、事業立ち上げや運営支援を行っている。2021年には、国内の人口減少や地域の人不足などを踏まえ、事業化プロジェクトの推進プロセスを計画起点から人起点に転換。想いやビジョンを持った人材の発掘・育成から始め、その人たちと計画を立てて実現を目指すというプロセスを採用した。「沿線まるごとホテル プロジェクト」でも2022年6月に、無人駅の駅舎に地域イノベーションを創出する拠点「沿線まるごとラボ」を開設。地域住民や事業者と連携し、魅力的な地域資源の発掘と編集に取り組んでいる。

生活の豊かさを起点とした価値提供

JR東日本の事業推進のベースには、2018年に発表したグループ経営ビジョン「変革 2027」がある。基本方針として、グループの「価値創造ストーリー」を、従来の「鉄道のインフラ等を起点としたサービス提供」から「ヒト(すべての人)の生活における『豊かさ』を起点とした社会への新たな価値の提供」へ転換すると提示。「沿線まるごとホテル プロジェクト」でも、数年単位ではなく10年以上先の豊かな生活を見据えて、地域に寄り添う「ヒトづくり」を重視。さとゆめのノウハウを活かしながらJR社員も伴走支援に参画し、沿線地域のくらしづくりにつながる事業創出を目指している。

相性のいい産業分野

生活・文化

地域住民だけが知っている食・文化・自然・風習などのコンテンツ化

旅行・観光

地域の環境を活かした自然と共生するエコツーリズムの展開

IT・通信

無人駅チェックインや宿泊・食事・体験予約などをつなぐシステムの構築

教育・人材

地域活性化・事業化を担う人材の育成や研修プログラムの展開

官公庁・自治体

既存の地域資源・建物・人を活かした地域活性化施策の展開

この知財の情報・出典