No.1191

HAPSの長期運用を可能にする翼用膜材

HAPS向け超軽量・高耐久性の翼用膜材

HAPS向け超軽量・高耐久性の翼用膜材

概要

「HAPS向け超軽量・高耐久性の翼用膜材」とは、成層圏通信プラットフォーム(HAPS)の機体に使用される超軽量・高耐久性の翼用膜材で、ソフトバンク株式会社とTOPPANホールディングス株式会社によって開発された。太陽光によるエネルギーを活用した「空飛ぶ基地局」HAPSは高度約20kmの成層圏から通信サービスを提供するため、地上の基地局よりもカバーエリアが広く、衛星通信よりも高速・大容量、低遅延の通信を提供できる。しかし、成層圏は強い紫外線や高濃度オゾン、極低温にさらされる極限環境であり、従来の汎用フィルムなどでは強度が低下してしまうことが大きな課題だった。開発された翼用膜材は、これらの極低温環境での強度の低下を抑制し、HAPSの長期運用を可能にする。また、成層圏環境を再現した評価手法を共同開発しており、今後、この翼用膜材の試験製造を進め、ソフトバンクが2029年以降に商用サービスでの活用を予定しているHTA型のHAPS(飛行機などのように揚力を持って滞空するHAPS)で使用する予定となっている。

ソフトバンクが開発中のHAPS機体「Sunglider」
SceyeのHAPS

なぜできるのか?

過酷な成層圏の環境にも対応した超軽量・高耐久性の翼用膜材と、その評価手法を開発

HAPSは「空飛ぶ基地局」と呼ばれ、成層圏を滞空する無人航空機などの機体から通信サービスを提供する技術。通信基地局を搭載した機体を長期間飛行させることで、大規模災害時における通信の復旧や、山岳部や離島といった既存の通信ネットワークの電波が届きにくい地域でのサービス提供が予定されている。HAPSは高度約20kmの成層圏から通信サービスを提供するため、地上の基地局よりもカバーエリアが広く、衛星通信よりも高速・大容量、低遅延の通信を提供できるという特長がある。しかし、成層圏は地上と比較にならないほどの強い紫外線や高濃度オゾン、-100℃近くにも達する極低温にさらされる極限環境であり、従来の汎用フィルムなどでは強度が低下してしまうことが大きな課題だった。そこで、ソフトバンクとTOPPANホールディングスは、過酷な成層圏の環境にも対応した超軽量・高耐久性の翼用膜材と、その評価手法を新たに共同開発した。

TOPPANホールディングスの技術活用でHAPSの機体の軽量化と安全性を両立

TOPPANホールディングスが包装材で培ってきたコンバーティング技術を活用し、極低温環境での衝撃に強い特殊樹脂に独自素材を緻密に積層することで、膜材の構造を最適化した。コンバーティング技術とは、フィルムなどの素材を、印刷や貼り合わせなどの加工によって高度な機能を付加し、最終製品に仕立てる技術のこと。重量を従来の汎用フィルムの同等以下に抑えながら、万が一膜材に傷が生じても荷重下で裂けが広がらない機能性を実現し、HAPSの機体の軽量化と安全性を両立する。

成層圏環境を再現した試験環境でより高度で信頼性の高い評価が可能

TOPPANホールディングスは、包装材のフィルム評価技術と建装材の耐候加速試験に関する知見を生かし、成層圏環境を再現した極低温環境での膜材評価や、短波長紫外線とオゾンの同時暴露が可能な試験環境を新たに構築した。この環境を活用することで、成層圏特有の劣化メカニズムを事前に詳細に把握し、製品設計に反映させることが可能となる。その結果、従来の試験では難しかった、より高度で信頼性の高い評価を実現している。

2029年以降にHTA型HAPSの商用サービスを予定し、2028年度までに量産技術の確立を目指す

ソフトバンクとTOPPANホールディングスは、2027年度までに今回開発した翼用膜材のさらなる軽量化と強度の向上を進め、成層圏での耐久性能を検証するとともに、2028年度までに安定した品質と十分な供給量を確保できる量産技術の確立を目指す。その後、性能試験の結果を踏まえてさらに必要な機能を付加し、ソフトバンクが2029年以降に商用サービスでの活用を予定しているHTA型HAPSでの使用する予定となっている。将来的には、高い耐久性が求められる他の分野にも応用していく計画をしている。

ソフトバンクは2026年、日本国内でのHAPS商用サービス開始に向けてアメリカ企業スカイと提携

ソフトバンクはHAPSのプレ商用サービスを、2026年に日本国内で開始すると発表している。この一環としてアメリカ企業スカイに出資し、日本国内におけるHAPSのサービス展開に係る独占権を取得する契約を締結している。スカイは、浮力を利用して飛行を維持するLTA(Lighter Than Air)型のHAPSを開発しており、これは空気より軽いヘリウムの浮力で上昇し、長時間滞空することが可能。また、搭載可能なペイロードも多種多様なため、今後さまざまな状況での活用が期待できる。ソフトバンクはこれまで開発を進めてきたHTA型のHAPSに加えて、新たにLTA型のHAPSを活用することで、早期の商用化を推進する。

相性のいい産業分野

IT・通信

災害時の通信サービスとして提供

旅行・観光

電波が届きにくいエリアでの通信環境改善

航空・宇宙

太陽光発電を利用した航空機の展開

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。 詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。 Top Image : © ソフトバンク 株式会社

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