No.934
2024.11.07
生理痛のつらさを疑似体験できるVRデバイス
ピリオノイド
概要
「ピリオノイド」とは、月経(生理)時の腹部の痛みを疑似体験できるVRデバイス。電気的筋肉刺激(EMS)を用いた、生理痛に近い電気刺激と強度調整が可能な装置で、生理痛のバーチャルな追体験を提供する。生理痛は個人差が大きく、症状や痛みの度合いが人によって異なるため、男性だけでなく、女性同士でも理解を得られない場合がある。「ピリオノイド」は、同じ体験でも痛みの感じ方が違うことを体感でき、他者の痛みを「想い合う」環境を醸成する。体験を起点に、生理痛・PMSなど女性特有の健康課題をオープンに語るきっかけを提供し、社会全体の理解を深めて、働く女性や女子学生の活躍・チャレンジを後押しすると期待されている。
なぜできるのか?
「月経痛体験システム」の研究開発
奈良女子大学と甲南大学の研究チームが開発した「月経痛体験システム」がベースにある。同システムを簡易化したデバイスとして、「ピリオノイド」を構築した。「月経痛体験システム」では、電気刺激による生理痛に加え、温感刺激で血が漏れた感覚を体験できる。EMSを用いた電極パッドを下腹部に装着して、電気刺激で月経時の子宮や周辺の収縮による痛みを再現。さらに温冷の熱制御ができる電子部品を内股に設置して、温かい液体がゆっくりと伝って漏れるような感覚を再現する。当初は、2019年に開催された「国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト」の応募作品として、学生主導で開発を推進。2021年には、VR関連の国際会議「VRST2021(Virtual Reality Software and Technology)」で発表し話題となった。
手軽に体験できるデバイス設計
簡単に生理痛を体験できるデバイスとして「月経痛体験システム」を改良した。従来技術は、パソコンや電気刺激を発生させる機械とつなぐ仕組みで、0~100の範囲で強度調整できるなど細かな操作ができる分、使いづらさがあった。「ピリオノイド」は、電極パッドと持ち運び可能な本体機構をつなぐだけのシンプルな設計で、場所を問わず手軽に生理痛を体験できる。電気刺激には、従来同様EMSを活用しており、電極パッドを下腹部に貼り付けて使用する。強度は「弱」「中」「強」の3段階で調整可能。人によって異なる生理痛の痛みを再現できる。
「生理痛体験研修」の展開
「ピリオノイド」を用いた「生理痛体験研修」を展開している。研修では、生理痛の基本知識などを学習した後、デバイスを装着して生理痛の疑似体験を実施。体験を踏まえ、感じたことや今後の行動などについてワークショップ形式で意見交換を行う。研修は、大学・専門領域が異なる大学教員5名が2020年に立ち上げた大阪ヒートクールが展開。奈良女子大学の准教授で、「月経痛体験システム」の開発メンバーの1人である佐藤克成氏が取締役を務めている。企業向け研修事業は2023年7月から開始。パナソニック コネクトやLIXILなど、様々な企業が社内研修に取り入れている。
相性のいい産業分野
- 製造業・メーカー
生理時の痛み・PMSなどあらゆる症状を体験できるデバイスの開発
- 教育・人材
生理の疑似体験から個人差や男女差を学ぶ教育・社内研修の展開
- メディア・コミュニケーション
屋内外で生理時の痛みを終日体験できる研修・ワークショップの開催
- 医療・福祉
感じている痛さを医師に伝えるコミュニケーションツールの開発
- アート・エンターテインメント
ペナルティで腹部の電気刺激が強まるイベント・ゲームの企画
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 大阪ヒートクール 株式会社