No.860

2024.06.07

標準工具で使える、世界水準の“緩まないねじ”

PLB v2

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概要

「PLB(パーフェクトロックボルト)v2」とは、世界水準の緩み止め性能を持ちながら、標準工具で使えるねじ。ボルト上に大小2種類のねじ山を形成しており、大きなねじ山に対応するナットがもう一方のナットを追いかけて回転を抑え、振動などによる緩みを防ぐ。締め込む際の摩擦力を用いる従来型のねじは、摩擦抵抗に依存する不安定さに課題があったため、物理的に緩みを防ぐねじ構造を開発。また、技術改良を続け、標準的な工具による手軽な締結・着脱を可能にしている。自動車や鉄道といった乗り物や構造物、製造設備、ロボットなど幅広い領域で、緩み点検の工数・コストを減らすとともに、緩みによる破損や事故を防ぎ、安全・安心を高めると期待されている。

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なぜ生まれたのか?

「PLB v2」は工法特許ではなく、構造特許である。使い方として、まず製造ライセンスによる転造加工生産がある。これは、ボルト生産ラインの転造加工工程に提供される「PLB v2」用ダイスを装着し加工する。また、製造ライセンスにより転造加工以外の方法での加工したり、「PLB v2」の原理を使って派生品の共同開発をすることもできる。

主な応用例として、鉱山設備機器(キルン、コンベヤーなどの高温・強震動環境下の設備の接合)、建機(振動を伴う周辺装置取付機器接合)、振動機器(振動コンベヤー、バケットコンベヤーなどの接合に有効)、風車(高所・振動部分のメンテ軽減)、農機インプルメント(大型農業機械の周辺装置内の接合)、その他 振動機器(衝撃性、極大激振により、溶接を余儀なくされている分野)がある。

なぜできるのか?

2種類のねじ山による緩み止め構造

1本のボルト上に大小2種類のねじ山(多条ねじ・一条ねじ)を持つボルトと、それに対応する2種類のナットで、独自の緩み止め構造を構築している。大きなねじ山は、小さなねじ山より軸が一回転した際に進む距離(リード)が長い。リードの差により、緩み回転が生じた時には、大きなねじ山のナットがリードの短いナットに追いついてかみ合う。それにより、両ナットの戻り回転を抑えて緩みを防いでいる。振動試験では、緩み性能は「ISO16130」規格で最高位の「緩み止め効果・良好」(残存軸力=締結力が85%以上)水準をマーク。2,000回の振動を与えても、約88%の残存軸力を維持できると実証した。

技術改良による締結・着脱の簡易化

「PLB v2」は使いやすさにこだわり、標準工具・電気工具で手軽に締められる構造にしている。初代の「PLB」は、2つのナットの装着が難しく、作業の仕方ではボルトが損傷するという課題があった。そこで研究を重ね、障害になっていた大小のねじ山の交差箇所の歯底を底上げするなどの技術改良を実施。標準工具で、2つのナットを一気に装着・締結できる「PLB v2」を構築した。外側のナットを締めれば内側のナットも従動して締結が可能。ナットを緩める際も、標準工具で外側のナットを緩めれば内側ナットも簡単に緩むため、着脱も手軽にできる。

独自の転造加工技術

ニッセーが50年以上培ってきた転造の加工技術を活用している。素材に強い力を加え盛り上げて成形する金属加工方法である転造は、素材を削って成形する切削加工より高い強度を実現する。ボルトの場合では、切削加工に比べて1.5倍以上の強度を得られる。ニッセーは、ダイスという丸い工具を使った転造技術に強みを持っており、「PLB v2」も同技術を用いて開発した。回転するダイスの間に棒状の素材を挟み、ダイスと素材を回転させながら成形する技術で、汎用品から極微細な精密品まで加工が可能。「PLB v2」では、ダイスに所定の研削を施して、ボルト素材に段階的に押圧・変形させて、独自のねじ山を転造している。この転造加工は丸ダイス転造、平ダイス転造、プラネタリー転造に対応したダイスが提供できる。

相性のいい産業分野

製造業・メーカー

キルン、コンベヤーなどの高温・強震動環境下の設備の接合・振動を伴う周辺装置取付機器接合

流通・モビリティ

自動車や電車、ジェットコースターのタイヤ・車輪など、安全を司る箇所への搭載

住宅・不動産・建築

橋や鉄塔、タワーなどメンテナンスが難しい構造物に活用

教育・人材

24時間稼働の工場設備・機械に利用し、点検時間などの生産ロスを削減

ロボティクス

物流センターや工場などで働くロボット・ロボットアームへの活用

官公庁・自治体

防災シェルターや災害避難場所の公共施設の構築時に活用

この知財の情報・出典

・特許第5042931号/第6606315号
・WO2016194842/US20180163757/CA2984100/MX2017015065

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