No. 009 手の中で「手を引く感覚」を演出する技術

ぶるなび

ぶるなびは、人間の感覚特性・非線形性を利用して擬似的に牽引力を錯覚させる技術。これまでの携帯端末では引っ張ったり押したりという「牽引力」を表現することはできなかったが、筐体内のおもりを一方向にすばやく、反対方向にゆっくりと振動させることによって「あたかも手を引かれるような感覚」を生み出し、新しい触覚体験を提示している。

なにがすごいのか?

  • 錯覚を利用して、誰かに手を引かれている感覚を与えることができる
  • 一方向だけでなく、平面内のあらゆる方向への牽引力を作り出せる
  • 軽量性と小型化により、片手で保持可能なサイズ感を実現している

なぜ生まれたのか?

きっかけの1つとして、視覚や聴覚に障碍を持つ方への情報伝達手段の研究から生まれた。非常時に危険を伝える手段として最も多く使われるのは音声や非常口などを記した誘導灯、つまり聴覚と視覚だが、こうした障碍のある場合には役に立たないことも多い。そこで触覚を使えば、緊急時でも文字通り「手を引く」ような自然な感覚で、避難する方向を伝えることができるかもしれないと考えた。

妄想プロジェクト

避難場所まで手を引いてくれる小型ナビ

百貨店や大型ショッピングモールで買い物をしているとき、大規模な地震や火災に見舞われたら、安全に避難することは想像以上に難しいだろう。立ち上る煙や障害物によって視界は遮られ、場内アナウンスは悲鳴や非常ベルの騒音でかき消されてしまうからだ。
そんなとき、「ぶるなび」によって的確な避難方向を誘導することができたらどうだろうか。施設内に手のひらサイズの「ぶるなび」を常備しておき、館内のビーコンと連動して現在地を把握。「手を引いてくれる」感覚で避難場所への方向を的確に示すことができれば、緊急時であってもそこまでパニックにならずに冷静に行動し、生存率が高まるのではないだろうか。

なぜできるのか?

人間の知覚特性を利用

人間の「速い動きには敏感で、遅い動きには鈍感」という知覚特性を利用している。「短時間の大きな加速度」と「長時間の小さな加速度」を周期的に繰り返し、振動するおもりの加速度に差をつけることで特定の方向への牽引力を感じさせている。

片手で保持可能な軽量性と小型化を実現

これまでは振動強度を確保するために振動部と制御部を分離していたため、両者を有線で接続する必要があった。振動に用いるアクチュエータの実装方法と振動パターンの最適化を進めることで振動部と制御部の一体化に成功し、小型化を実現した。

錯覚による力覚(手応え)を生成

携帯電話やゲーム機などの携帯端末ではバイブレーションによる振動を表現することはできても、引っ張ったり押したりされる感覚を表現することはできなかった。力覚(手応え)を生成するためには支点が必要となるが、携帯端末はどこにも固定されていないためだ。空気噴流や磁力を使う以外には実現することが不可能だったが、錯覚を利用することで牽引力を感じさせることに成功している。

相性のいい分野

エンターテインメント
脱出ゲームなどのリアルイベントにおける、VR映像と連動させた新しい方向誘導体験
防災
視覚や聴覚を使用しない形での、振動による避難場所への方向誘導
ヘルスケア
視覚障碍者や身体が不自由な人への日常生活における方向指示サポート
教育
VR映像と連動させた複合的な知覚体験による理解の促進
ペット
VR映像と連動させた犬の散歩のイメージトレーニング

知財情報

主な知財ホルダー:日本電信電話株式会社

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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知財ハンター

Ryo Arai
荒井 亮 Ryo Arai
Producer / Konel Inc.

1977年東京都荒川区生まれ。立教大学社会学部産業関係学科卒。クリエイティブ会社にてライブ配信事業のプロデューサーとして番組の企画制作、各種アライアンスやチームビルディングを担当。その後、Konelに所属し「日本橋地下実験場」を中心としたプロジェクトに関わる。聴覚を拡張するプロダクト『PlayEar』の開発や、インターネット世代のポップカルチャー、メディアアート、ペットテック領域に関心がある。