No. 107 素材を「テーラードデザイン」する人工タンパク質

Brewed Protein(ブリュード・プロテイン)

Brewed Protein™ (ブリュード・プロテイン)は、植物由来のバイオマスを主な原料とし、微生物発酵(ブリューイング)プロセスによりつくられる人工タンパク質素材。従来の石油を原料とする合成繊維とは異なり、地球上に豊富に存在するタンパク質を発酵させて原料を生産できるため、著しくエネルギー消費量が少なく、環境負荷が小さいことが最大の特徴。多種多様な特性や形態の材料を設計することが可能で、アパレル分野における脱マイクロプラスチックや脱アニマル、輸送分野における軽量化のニーズ等に対して大きな役割を果たすことが期待されている。

なにがすごいのか?

  • 微生物の力を活用した人工タンパク質素材
  • 衣類以外にもさまざまな素材や形態を設計することが可能
  • 石油に頼らず環境負荷が少なく、持続可能な社会の実現に貢献

なぜ生まれたのか?

新世代バイオ素材開発を行うSpiber社の「環境問題が平和に直結しているという」という思いのもと、持続可能で人類に有益な素材を提供すべく開発を開始。天然のクモの糸を再現する技術「QMONOS(クモノス)」をはじめとする、15年に及ぶ研究開発を経て、遺伝子配列を目的に応じてデザインし、微⽣物による発酵プロセスでの生産方法を確立した。名称を「QMONOS」からその製造プロセスにフォーカスした「ブリュード・プロテイン」へと変え、2019年にゴールドウイン社「ザ・ノース・フェイス」とのコラボレーションで「MOON PARKA」として実用化に至った。

実現プロジェクト

MOON PARKA

「MOON PARKA」は、ゴールドウインとSpiberにより世界で初めてブリュード・プロテイン™(人工タンパク質素材)を用いて共同開発されたアウターウェア。2015年のプロトタイプ発表後、当初の人工クモ糸を使用した製品化を断念し、微生物による発酵プロセスでの生産方法を確立。ナイロンをベンチマークにブリュード・プロテインを合成し、「THE NORTH FACE」として定める厳しい品質基準をすべてクリアしたプロダクトが生み出された。アウトドア・アパレル業界のみならず各業界の話題をさらった同商品は、現在、量産化に向けて年間500〜600トンを生産できる原料プラントの建設を進めており、2021年の本格稼働を目指している。
共同開発を続けてきた両社は、新たなコラボレーションプロジェクト「THE NORTH FACE Sp.」を始動し、「アウトドア、ファッション、アート、サイエンス、テクノロジーの境界を横断し、素材の分子配列にまでさかのぼってデザインされたプロダクトを通じて、地球と人類の未来について考えるきっかけを提供する」としている。

なぜできるのか?

遺伝子レベルで合成、発行培養

バイオインフォマティクスから遺伝子工学、合成生物学、分子生物学、発酵工学、有機化学、高分子化学、材料工学など幅広い分野にまたがる分野のトップレベルの研究者の力を結集し、人工タンパク質を遺伝子レベルで合成し、発酵培養させることで、多彩な糸やプラスチックを生産するシステムを確立した。

持続可能な新世代素材

主原料を枯渇資源である石油に頼ることなく、海洋生態系を含めた地球環境への影響が懸念されるマイクロプラスチックを生み出すこともない。また、動物由来の素材と比べ、温室効果ガスの排出量も削減でき、動物倫理の懸念もないため、持続可能な社会の実現に重要な役割を果たす。

狙った特性をデザインすることでの幅広い応用可能性

タンパク質を構成するアミノ酸の配列を用途に合わせてデザインすることで、髪の毛やシルク、カシミヤ、ウール、ファーといった多様な素材に合成することができる。また、べっ甲や水牛の角のような樹脂材料、医療用材料、次世代軽量複合材料への添加剤まで、多様なかたちに姿を変えることが可能。

相性のいい分野

ファッション
動物を一切傷つけず、ふわふわでリッチな質感を持つ人工ファーコート
教育
微生物を発酵するところから関わり、マイ微生物から身の回りの素材を作る教育体験
モビリティ
ドアパネルやシートのクッション材などを軽量化し、環境に配慮したスーパーエコカー
建築
撥水性の皮膚、粘性を持つ糸、硬い殻といった生物の特性を持った素材による建築物
環境
すべてを「ブリュード・プロテイン」由来の素材で設計し、終了時にリサイクル可能な広告展示物

知財情報

主な知財ホルダー:Spiber株式会社・株式会社ゴールドウイン

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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知財ハンター

Minako Ushida
丑田 美奈子 Minako Ushida
Writer / Konel Inc.

1982年神奈川県相模原市生まれ。ライター・プロデューサー・バックオフィサーの顔を持ち、活字と音楽をこよなく愛する。別名・最もテクノロジーから遠い超文系知財ハンター。彼女の琴線に触れる知財とはすなわち万人に届きやすい知財であることを意味する。未来を作る教育関連の知財や食関連など、実用性が高く生活に密着する知財を日々探している。


知財ライティング: 荒井 亮