No.876

2024.08.02

塩分を吸着し体内への吸収をコントロールする技術

塩分コントロール技術 by トイメディカル

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概要

「塩分コントロール技術 by トイメディカル」とは、塩分(ナトリウム)を吸着して、体内への吸収をコントロールする技術。海藻由来の食物繊維である「アルギン酸類」の塩分吸着機能を活用し、塩分を胃の中でキャッチして体外に排出する。健康のために塩分を制限している人工透析患者の声から、塩分量を気にせずに美味しい食事ができ、健康にも配慮できる技術として開発した。サプリメントや調味料、健康食品だけでなく、塩を使った国内外のあらゆる食品・外食事業での幅広い展開が期待される。

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なにがすごいのか?

  • 塩分を胃の中でキャッチして体内吸収を抑える

  • 海藻由来のアルギン酸類の塩分吸着機能を活用

  • 食事に含まれる塩分量を気にせず食事を楽しめる

なぜ生まれたのか?

トイメディカルの竹下英徳代表が、塩分などの食事制限をしている人工透析患者から「昔のように熊本ラーメンを食べられるようなものを作ってほしい」と言われたことがきっかけだった。腎臓疾患だけでなく、高血圧などの疾病リスクを抑えるためしばしば減塩や無塩が求められるが、その反面塩分を控えると食事に物足りなさが生じる。そこで、塩分を気にせずに食事をできる技術の検討を始めた。検討を進める中で、脂肪や糖を抑制する既存技術から、塩分の吸収を抑えることを着想。熊本大学に声をかけて共同研究を開始した。

塩分を吸着する複数の原材料候補から、海藻由来のアルギン酸類を採用。実験と試行錯誤を重ねて、効果が得られる適切な配合を特定した。2年の研究開発期間を経て「塩分コントロール技術」を構築。同技術を用いて、アルギン酸類配合サプリメント「デルソル」を製品化し、2018年より販売を開始している。

なぜできるのか?

海藻由来のアルギン酸類の活用

昆布やわかめなどの海藻のぬめり成分であるアルギン酸類を塩分吸着に用いている。塩分を吸着する性質を持つ食物繊維はアルギン酸類以外にも存在したが、カリウムやリンを多く含むなど透析患者にはそぐわなかった。研究では約30種類の原材料候補を選定し、機能性と安全性の高い海藻由来のアルギン酸類を採用した。アルギン酸類の原料であるアルギン酸は、イオンを取り込む力が強く、食塩を構成するナトリウムイオンと簡単に結合する。また、アルギン酸類は人間の消化酵素では分解されない食物繊維のため、消化されずに排出される。そうした特性を活かし、胃の中で塩分を吸着してゲル状になり、便で塩分を排出する「塩分コントロール技術」を構築している。

熊本大学との共同研究

熊本大学生命科学研究部の藤原章雄准教授に声をかけ、共同研究で技術を構築した。研究では、食品などに用いられているアルギン酸ナトリウム・カリウム・アンモニウム・カルシウムの中から、カリウムを放出せずナトリウムとの結合力が高い、アルギン酸アンモニウム・カルシウムを選定。マウスに各食物繊維を投与する実験を行い、血液中のナトリウムの濃度を抑え、糞便中のナトリウム排泄を促すという結果を獲得。研究結果を踏まえ、塩分排出を促す主成分として、アルギン酸アンモニウム・カルシウムを用いている。

誰かの「困った」から始める開発方針

トイメディカルの製品開発方針は、『誰かが「困っている」ことを独自技術で解決し、使う人の「笑顔」を生み出す』。従来は医療製品の開発販売事業が主軸で、健康食品は手がけていなかった。透析患者からの声を受け、開発方針のもと、リスクも想定の上で新規領域に参入。「塩分コントロール技術」の開発に至っている。医療製品では、人工透析の際に剥がすのが大変なテープを使わず「ルート固定ができる止血バンド」や、剥がすときに痛くない「シリコーンゲルテープ」などを展開している。

相性のいい産業分野

食品・飲料

食品・飲料などの製品や飲食店の提供メニューに活用

医療・福祉

疾病を患っても最期まで食事を楽しめる医療用食品の開発

航空・宇宙

宇宙空間の長期滞在時に塩分摂取を抑える宇宙食の開発

農業・林業・水産業

塩分吸着力を含む機能性に優れた海藻の育成

環境・エネルギー

アルギン酸類を抽出する海藻の養殖で大気中のCO2削減を加速

この知財の情報・出典

・特許第6497764号

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © Pixabay