No.1028
2025.04.02
宇宙で食料を安定して生産するシステム
宇宙農場システム

概要
「宇宙農場システム」とは、宇宙空間における食料自給を実現するための植物栽培システム。密閉型の袋状容器を用いた「袋型培養槽技術」で、宇宙空間特有の課題である雑菌や害虫の侵入を防ぎ、無菌状態で安全に植物を栽培することを可能にしている。限られたスペースでも効率的な作物栽培が可能であり、省エネルギー性にも優れている。月面や火星での本格的な宇宙農場建設として計画されており、宇宙での長期滞在を支える基盤技術として、また地球上の砂漠や極地など過酷な環境下での農業生産や、災害時の迅速な食料供給など、多岐にわたる分野での応用が期待されている。
なぜできるのか?
病害虫がおらず高成長、無農薬
将来的に月面に農場を設置することになれば、作物を安定して生産するために病害虫防止と緊急時食料のバックアップの対応が必要となる。また、地球からの輸送にあたっては栽培システムの積載重量低減も求められる。小型の袋の内部で植物を増殖させる「袋型培養槽技術」を用いた栽培方式は、密閉した袋内で植物を栽培するため、雑菌の混入を防ぎ、臭気発生がないコンパクトなシステムだ。この技術を用い、「高クリーン度・低圧環境」で栽培することで、植物病原菌や害虫の侵入を防ぎ、需要に応じて新鮮な食料を供給することができる。将来的には、この袋型培養槽技術を用いることで、一度に大量の葉菜類の栽培だけでなく、ウイルスフリーな苗の育成にもつながるなど、惑星探査時の長期の宇宙船内滞在時や滞在施設での大規模栽培への活用が期待される。
世界初の微小重力下で無菌培養レタスの栽培に成功
植物の生育に一番影響を与えるのが重力だ。国際宇宙ステーション(ISS)にはごくわずかな重力(微小重力)しかなく、重力がないと空気の対流が起こらず、植物自身の温度が上昇して生育を妨げてしまう。2021年、JAXA 、竹中工務店、キリン、東京理科大、千葉大学との共同研究で、宇宙での袋栽培レタスの実証実験を国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」で実施し成功した。今後は、生育したレタスと培養液、生育の様子を撮影した記録を回収し、宇宙での適用可能性や本栽培方式の優位性を評価する。また、育ったレタスに食品衛生上の問題がないかの確認や、栽培後の培養液を分析し環境制御・生命維持システムで再利用処理が可能かについての確認も実施される予定だ。
宇宙居住を想定した研究
千葉大学は、これまで個々の研究者が園芸学、生命科学、植物工場、AI・ロボティックス、リサイクル技術の分野で世界を先導し、また、宇宙居住を想定した研究も行われてきた。千葉大学の園芸学研究院では、作物・野菜・果樹・花卉を対象とした先端研究が展開されており、共同研究を幅広く実施する体制が整備されている。これは植物工場研究の実績とともに、宇宙食料生産システム研究では大きな強みだ。また、園芸学研究院の特色として、緑地環境科学や健康科学や経済学が大きな柱になっていることは、将来的な宇宙ガーデニングを含む「癒やし」や宇宙を舞台にした流通経済の研究に波及する可能性をも秘めている。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
千葉大学 園芸学研究院附属 宇宙園芸研究センター
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 千葉大学 園芸学研究院附属 宇宙園芸研究センター