No.969

2024.12.10

自動で動き、卓球の“コツ”の体感的な習得をサポート

卓球ラケット型力触覚提示デバイス

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概要

「卓球ラケット型力触覚デバイス」とは、ラケットが自動的に動き、プレイをサポートすることで、卓球初心者でも適切なプレーを触覚的に学べるデバイス。カメラでプレイヤーとデバイスの位置や向きをリアルタイムで分析し、デバイスにフィードバックすることで、言葉化しづらい「力触覚」(手応えや力加減)や動作タイミングを伝達し、プレイヤーの“コツ”の身体的な習得を促す。経験やスキルに依らず、誰もが適切なサポートを受けられることから、スポーツや芸術などの技能習得のほか高齢者や障がい者の生活支援などへの応用が期待されている。

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なにがすごいのか?

・言葉では伝達しづらい“コツ”を直感的に習得可能
・スポーツや芸術、生活支援などへの幅広い応用可能性
・小型・薄型化を実現したジャイロ方式モーター

なぜ生まれたのか?

センシング技術やデータ解析技術の進歩に伴い、近年、データに基づく指導やトレーニングの支援が行われている。しかし、これらの指導や支援は言葉によるものが多く、力加減や動作タイミングといった“コツ”の直感的な伝達は困難だった。

KDDIとKDDI総合研究所は、VR技術によるプロスポーツ体験や、自由視点技術によるスポーツの新たな観戦スタイルの提案、行動認識AIによるアスリート育成支援など、スポーツの分野においてXRやAIを活用した研究開発を推進するとともに、「Sync Glass」や「Sync Sofa」など、五感を伝達する技術の開発にも取り組んできた。

そこで両社は、映像伝送や映像解析技術の知見と力触覚提示技術を掛け合わせ、スポーツ用具や楽器などの道具を介して学習のコツを直接的に伝える、教育、学習領域のDXに着手。「卓球ラケット型力触覚デバイス」の開発を行った。

なぜできるのか?

データを遅延なく伝達する「デジタルツイン技術」

KDDI株式会社とKDDI総合研究所は、これまでの映像伝送技術や映像解析技術の知見を活用し、現実世界をデジタル上に再現する「デジタルツイン技術」を実現。「卓球ラケット型力触覚デバイス」では、本技術を活用することで、データを遅延なく伝達するシステムを構築。カメラで得たデータからボールを打ち返すための理想的な打球位置やスイングのタイミング・速度をサーバーで瞬時に解析し、スイングのタイミングと速度をデバイスにリアルタイムで送信することが可能になった。

理想的なプレイをサポートする2つのモーター

既存の力触覚提示技術の多くはロボットアームなどの接地型や外骨格型で、スポーツのプレーのアシストには適していなかった。また、気体を噴射して姿勢制御をおこなうエアジェット方式もあるが、小型化した場合に力が弱まる場合があった。一方、「卓球ラケット型力触覚提示デバイス」には、2つのモーターを搭載。それぞれの回転軸を直交させることでジャイロ効果を発生させ、前後方向に引っ張る力を提示することが可能になった。

ジャイロ方式による装置の小型化・薄型化

従来、ジャイロ方式の力触覚提示技術は、円盤が自由回転するための球体のスペースが必要となるため、装置が大型化する場合があった。一方、「卓球ラケット型力触覚提示デバイス」では、プレイヤーの動作に併せて回転円盤の角度や速度を制御するため、小型・薄型のラケットでも搭載が可能になった。

相性のいい産業分野

スポーツ

卓球をプレイしたことがない子どもでも理想的なフォームを習得可能

アート・エンターテインメント

「力触覚提示技術」でバイオリン初心者の上達をサポート

教育・人材

筆についたモーターの動きで理想的な文字が書ける習字セット

医療・福祉

研修医の手術研修を支援するモーター付き医療器具

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © KDDI 株式会社