No.814

2023.11.15

電気・ガスを使わず新聞紙でごはんが炊ける炊飯器

魔法のかまどごはん

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概要

「魔法のかまどごはん」とは、電気やガスを使わずに、新聞紙を燃料にしてごはんが炊ける炊飯器。かまど部分の穴に新聞紙を入れて火をつける動作を、左右交互に繰り返すことで、炊き立てのごはんが出来上がる。関東大震災から100年を迎えた2023年に、被災時でも炊き立てのごはんが食べられる炊飯器として開発された。災害時はもちろん、アウトドアや日常的にエネルギー使用量を減らす手段としての活用や、インフラ整備が進んでいない国内外の地域への展開などが期待される。

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なにがすごいのか?

  • 新聞紙を燃料に用い、電気やガスを使わずに炊飯可能

  • 被災地など厳しい環境下でも炊き立てのごはんが食べられる

  • 米の味と香りを引き立てるかまどの構造を採用

なぜ生まれたのか?

タイガー魔法瓶は、関東大震災発生年の1923年に創業。震災時に商店に保管されていた、虎印魔法瓶100本すべてが無傷で残ったとして注目を集めたことをきっかけに、事業を拡大した歴史を持つ。 関東大震災から100年を迎えた2023年、近年の地球温暖化に伴う自然災害の頻発化・深刻化により、災害大国と称される日本でも被害が拡大している。その中で同社は、次の100年を見据え、被災時でも炊き立てのごはんで安らぎを提供することを目指して開発に着手。開発のきっかけは、イノベーションの醸成を目指す社内公募制度「シャイニング制度」に寄せられたアイデアだった。

製品開発は、タイガー魔法瓶がもつ熱制御技術をもとに、かまど構造を用いて推進。被災者からの聞き取り調査なども行い、災害時に実際に活用できる製品として開発した。2023年8月より、創立100周年記念モデルとして、オンライン限定で注文受付を開始している。

なぜできるのか?

簡単な準備でごはんが炊ける製品設計

米と水以外に、新聞紙と火を起こせるマッチやライター、軍手があれば炊飯可能。白米では1~5合、炊き込みごはんは3合まで炊飯できる。例えば米3合を炊く場合は、新聞紙36ページほどあれば足りる。使える物資が限られた被災地でも炊飯しやすい設計にしている。

燃焼効率が良いかまど構造

直火・かまど・内釜・フタで構成される、かまどの構造を採用。新聞紙の燃焼による熱を逃がさず、内側のなべに効率良く伝えて、米の加熱を可能にしている。なべ底から大火力を加えることで、上下で温度差を作り出し、なべ内の自然な対流を実現。米の甘みなどを感じられる炊飯を可能にした。

新聞紙の燃焼火力を引き出す炊飯プロセス

新聞紙を、かまど部分の左右の穴に規定の間隔で交互に入れ、燃焼させる方法を採っている。炊き始めの9分までは1分半間隔、その後の炊き上げは1分間隔で新聞紙を投入する。このプロセスにより、新聞紙を完全燃焼させて、炊飯のための火力確保・維持を実現している。開発時に新聞紙で火力を得るためのトライアルを重ねる中で、最適な燃焼プロセスとして発見し、採用に至った。

負荷が少なく後始末しやすい仕様

炊飯後にすすが付いたなべは、水で濡らしたスポンジでこすって汚れが落とせる仕様で、洗剤の使用は不要。新聞紙の燃えカスも少量になるため、後片付けも簡単にできる。炊飯時の本体は、幅・奥行25㎝×高さ23.3cm、重さ約3.1㎏だが、高さ約18㎝までコンパクトにして収納可能。防災用備品としても保管しやすい仕様にしている。

相性のいい産業分野

生活・文化

キャンプ用品兼防災グッズとして住まいに導入

官公庁・自治体

被災時用の備品として全国の自治体で活用

資源・マテリアル

二酸化炭素の排出を抑えられるかまど燃料の開発

製造業・メーカー

かまどの熱を活かしたデバイス充電器などの防災グッズの開発

食品・飲料

かまど炊きに適した米や、かまど調理が可能なインスタント食品の開発

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © タイガー魔法瓶 株式会社