No.933
2024.11.05
藻場を荒らす痩せたウニを畜養する循環型ビジネスモデル
ウニノミクス®
概要
「ウニノミクス®」とは、海藻が群生する「藻場」を荒らす痩せたウニを畜養して流通させるビジネスモデル。地球温暖化などで異常繁殖した身入りが悪いウニを捕獲し、陸上で畜養して身を太らせ、飲食店などに販売する。海藻が減少・消失する「磯焼け」の原因の1つとなる厄介なウニの活用・流通と、生態系の基盤であり二酸化炭素(CO2)も吸収する藻場の再生を同時に進めることができる。海洋環境を保全しながら、漁業の活性化や地域産業を創出できるビジネスモデルとして、日本を含む世界各地への展開が期待されている。
なぜできるのか?
磯焼け原因になる異常繁殖したウニの活用
気候変動・環境汚染などの変化で異常繫殖したウニを軸に、ビジネスモデルを構築している。急増したウニは、身入りが悪くて売り物にならず通常では漁獲されないため、増え続けて海藻を食い荒らし、磯焼けの原因となる。駆除・移植といった管理が必要だが、費用負担などを理由に放置されている藻場が各地に存在する。そこで、地域の漁業事業者と連携して厄介なウニを捕獲し、買い取って畜養する仕組みを構築した。増えすぎたウニを海底から除去すると、6カ月以内に海藻が回復し藻場が再生する。除去による藻場の修復効果とCO2吸収効果については、ENEOSホールディングスらと連携して実証。ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が手がける、海洋生態系に取り込まれた炭素(ブルーカーボン)のクレジット「Jブルークレジット®」に世界で初めて認証された。
ウニの成長促進に特化した専用飼料の構築
ウニの成長促進に特化した「美味しく育つ」飼料を構築し、痩せたウニを畜養している。食用昆布を生産する際に余る端切れを主原料に用い、昆布の旨味成分と栄養を凝縮。ホルモン剤・抗生物質・遺伝子組み換え素材・保存料などを一切使わず、日本国内で一括製造している。常温保管も可能で、年間を通して安定的な品質・コストで供給できる。飼料のベースには、ノルウェー食品・漁業・水産養殖研究所「Nofima」が90年代から行ってきた研究・技術を活用。水産飼料事業などを展開する日本農産工業とともに改良を加え、日本の消費者の口に合うウニを育成できる餌を完成させた。飼育期間2カ月ほどで、痩せたウニの身を太らせて商品化できる。
独自の畜養システムとノウハウ
ヨーロッパの研究機関や養殖機材技術企業とともに、陸上でウニを効率的に畜養できる「閉鎖循環式畜養システム技術」を開発した。天然ウニは海水温の変化により旬が決まり、出荷量が変動するため、通年の安定供給を想定して、海水温の変化の影響を受けない陸上での畜養を選択。ウニのトゲ・排せつ物・食べ残しのエサなどを含む水槽の排水をろ過・浄化して循環させる仕組みを構築し、成長に適した水温・水質を管理している。排水で海を汚さず、台風・赤潮・異常気象などの外的要因による出荷減少も防いで、安定的な畜養を実現。独自システムとウニの生態知識・ノウハウで、国内外のさまざまな品種・生息海域の痩せウニに対応している。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
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Top Image : © ウニノミクス 株式会社