No.1161
2026.07.17
湖に浮かび、善い行いで乗れるアムステルダム初のサウナボート
Warm Hearts Sauna(ウォームハートサウナ)

概要
「Warm Hearts Sauna(ウォームハートサウナ)」は、オランダ・アムステルダム西部のスローテル湖に浮かぶ、三角屋根の薪サウナボート。アムステルダム初のサウナボートで、ボランティアの船頭が湖をゆっくりと回遊させ、熱くなった頃に停まると、扉の先には冷たい湖がそのまま広がっている。利用者は熱と水、静けさと会話を行き来しながら時間を過ごす。
乗船には、お金ではなく「誰かのためにした善い行い」が必要となる。近所の人を助ける、公園のごみを拾う、誰かのために料理をするといった小さな行為のストーリーを持ち寄ることで、人はこのサウナに参加できる。運営するWarm Hearts Foundationは、優しさを広め、人々がコミュニティの一員だと感じられるよう支援することを掲げており、これまでにアムステルダムで800件以上の善行が生まれたという。サウナでありながら、都市の孤独に応答する移動式の公共空間として立ち上げられている。
なにがすごいのか?
お金ではなく「善い行い」を入場の対価として乗船できる
湖を回遊しながら、熱と冷水浴をそのまま水辺で行き来できる
肩書きを脱いだ見知らぬ人同士が、同じ熱の中で出会い直せる
なぜ生まれたのか?
始まりは、オランダで暮らすフィンランド出身のエルサ・ハヴァスさんだった。来た当初は仕事もなくオランダ語も話せなかったが、スローテル湖で泳ぐうちに友人ができ、この湖が単なる水辺ではなく「居場所」になっていった。同じく湖で泳いでいたオランダ人のフランス・ハイゼントフェルトさんと出会い、「フィンランドのように、この場所にもサウナがあったら」と語り合ったことが構想の出発点となる。背景には、都市の孤独という課題がある。オランダ統計局(CBS)によれば、2023年にはオランダの15歳以上人口の10.8%が「強い孤独」を感じており、2019年の約8.7%より高い水準にある。国外で生まれた人々ではその割合がさらに高い。多様な人が近くに暮らしていても出会うとは限らない——大きな制度やキャンペーンではなく、小さなサウナ船から都市の課題に応えようとした住民たちの試みとして生まれている。
なぜできるのか?
本場フィンランド製の薪サウナを搭載
船体には、サウナの本場である中央フィンランドのHarvia(ハルヴィア)社製の薪サウナストーブを搭載している。薪で温められた木の空間が、湖上を移動しながらも本格的な熱を生み出す。フィンランドではサウナが暮らしの一部として根づき、2020年にはサウナ文化がユネスコ無形文化遺産にも登録された。服装や肩書きの差が薄れ、同じ熱に耐え、同じ水に飛び込むという反復が、初対面の人同士にも共有体験をつくる——その文化的な土台を、湖に浮かぶ一艘の船へと凝縮している。
寄付・ボランティア・助成金を組み合わせた運営
無料で開かれた場は、複数の支えの組み合わせによって成立している。地元の人は一定額を寄付することで貸し切り利用ができ、その収益が誰もが参加できる運営に充てられる。船を動かすのはボランティアの船頭で、寄付・ボランティア・善行・助成金が組み合わさることで小さな船は湖上を進み続ける。2024年にはアムステルダム750周年のプログラム「Amsterdam 750」に採択され、助成金を得てプロジェクトが大きく前進した。
制度の壁を一つずつ越えた実装
湖に浮かび、薪を燃やし、人を乗せて航行する場所をつくるには、安全基準・水上利用許可・消防・船舶規制・保険といった数多くのルールを満たす必要があった。発案者たちは当初の地域予算申請に落選しながらも、自費でレンタルサウナを使った実験を重ね、仲間とスポンサーを集め、Warm Hearts Foundationを立ち上げて建設へとこぎつけた。誰もやったことのないことを、制度を一つずつ確認しながら手探りで形にした実装力が、この知財を支えている。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © Warm Hearts Sauna

