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2024.09.06
知財ニュース
「脂質ゼロの油」「脂質・糖類ゼロのクリーム」を生成する研究、明治大が発表―「食感」の制御も可能に
明治大学・総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室は2024年9月2日、「脂質ゼロの油」「脂質・糖類ゼロのクリーム」を生成する研究を発表した。独自の「味覚メディア」をベースに、味と食感を制御して油やクリームを表現。脂質や糖類による健康リスクを気にせずに油・クリームを味わえるという。
宮下芳明研究室は、これまでも味覚をコントロールできる様々な「味覚メディア」の開発に取り組んできた。2023年8月には、味溶液の混合で味を制御できる調味装置「TTTV3」を発表。今回の研究のベースに用いている。
「TTTV3」は、基本五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)や辛味などを感じさせる味溶液を食べ物に混合噴射して、味を再現する。20の味タンクを0.02ml単位、1,000段階で制御可能。10の60乗(1那由他)通りの味の組み合せを出力できる。ワインやカカオ、梅干しなど、産地や品種の微妙な味の違いまで再現するという。
「脂質ゼロの油」を生成する研究「Virtual Oil Generator」では、味溶液に加え、食感を制御するイヌリン(水溶性食物繊維)・低強度寒天の溶液を搭載。イヌリンで口に残る油の食感・粘性・脂質感を調整し、低強度寒天で滑らかさを調整して、油を再現している。「TTTV3」1台で5種類のオリーブオイルを表現できる。
例えば、パスタや鶏のささみ肉などにかけてパサパサ感を軽減する、見た目の光沢感を付与するなどの使い方が可能で、油の取りすぎを気にせずに食事を楽しめる。また発表時に展開した動画では、「香り提示カップ」を使って液体と同時に香り味わう様子も公開している。
「脂質・糖類ゼロのクリーム」を生成する研究「Virtual Cream Generator」では、装置を機能拡張した。溶液混合に加え、新たに「粉末混合機能」を搭載して表現の幅を拡大。さらにミキサーで攪拌する機構も追加し、クリームを生成する装置を構築した。
クリームは、ゼラチン・サイリウムなどで粘性や気泡を調整して食感を制御。甘味は、糖類ではない甘味料を用いて調整した。粘弾性を測るレオメーターの測定では特に、口どけの類似を示す結果が得られたという。
生成クリームには卵や牛乳を使っていないため、アレルギーを持つ人やヴィーガンでも食べることが可能。糖質コントロールしている人も気がねなくクリームを味わえる。
右:「Virtual Cream Generator」で生成したホイップクリーム、カスタードクリームで作ったシュークリーム / 左:通常のシュークリーム
宮下芳明研究室は、2024年9月2日~4日に開催された学会「Entertainment Computing 2024」で、2つの研究成果を発表。現地では試食のデモンストレーションも行い、高評価を得た。学会では、「Virtual Oil Generator」「Virtual Cream Generator」いずれも対話発表賞を受賞した。両研究の今後の進展と実用化が期待される。
Top Image : © Meiji University