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2021.09.01
知財ニュース
【9月1日は防災の日】不測の未来に備えるための防災テクノロジー
「天災は忘れた頃にやってくる」——— そんな警句をよそに、近年では忘れる間もなくさまざまな災害が私たちの身の周りに降りかかってきています。従来のパターンでは予測できない気候変動、記録的な豪雨と猛暑、そして全国各地で頻発し続けている地震。
「災害大国」であるこの国で社会を形成し生きるためには、そうした災厄のリスクと長く付き合いながら暮らしていくしかないのかもしれません。しかし、過去の災害の記録から学び、最新のテクノロジーを活用して今後の防災・減災に向けて知見を蓄えることは可能なはず。そんな不測の未来に備えるためのヒントとなる防災知財を、9月1日の「防災の日」に合わせてまとめてご紹介します。
異常気象を日常風景に重ね合わせるAR 「ARお天気シミュレーター」
「ARお天気シミュレーター」とは、天気や災害発生時の状況をその場で擬似体験できるアプリ。ユーザーの見ている光景に拡張現実(AR)技術を適用することで、大雨や大雪、浸水被害が今まさに目の前で起こっているかのような体験をもたらす。従来の想定訓練や防災教育と比べ、ARお天気シミュレーターによる光景は「何がどの程度まで浸水するのか」といった具体的状況を視覚的に把握しやすく、気象現象への理解促進やいざという時の防災意識の向上へ繋がることが期待されている。
水道いらずの手洗いスタンド「WOSH」
「WOSH」は水道を必要としない手洗い場である。「WOSH」は、使用した水の98%以上を循環させており、電源と20リットルの水さえあればあらゆる場所での手洗いを可能にする。3つのフィルターによる濾過・不活化でウイルスや不純物を取り除き、その水質はWHOの飲料水ガイドライン等の基準を満たす。ニューノーマル時代の衛生対策のほか、将来的には災害時や砂漠地帯など、水が貴重な場面での活用が期待される。
手の中で「手を引く感覚」を演出する技術「ぶるなび」
「ぶるなび」とは、人間の感覚特性・非線形性を利用して擬似的に牽引力を錯覚させる技術。これまでの携帯端末では引っ張ったり押したりという「牽引力」を表現することはできなかったが、筐体内のおもりを一方向にすばやく、反対方向にゆっくりと振動させることによって「あたかも手を引かれるような感覚」を生み出し、新しい触覚体験を提示している。
軽量ステルス型トンボドローン「DragonflEye」
「DragonflEye」とは、生きたトンボを好きな場所へ飛ばすことのできる、ステルス型の生体ドローン。制御装置を取り付けられたトンボは、背部のソーラーパネルから供給した電力で装置を稼働させて滑空し、センサーで情報を収集する。往年の課題であったドローンの小型化について、トンボをそのままドローン本体に流用するという驚くべきアイデアで解決している。将来的には、被災地での救助支援や人間が足を踏み入れにくい場所での調査支援などへの活用が期待されている。
社会性アメーバが避難経路を導く「粘菌アルゴリズム」
「粘菌アルゴリズム」とは変形菌(モジホコリカビ、社会性アメーバ)が輸送管ネットワークを作る過程に着想を得た避難経路探索アルゴリズム。防災のための避難経路を決める際、従来の最短経路を求めるアルゴリズムでは単一の始点と終点によるものしか提示できなかったが、粘菌アルゴリズムを使えば、定量的根拠に基づいた複数の避難経路を得ることと、その評価ができるため安心・安全な防災対策案を立てられる。将来的には、浸水や周辺火災などの災害危険度を考慮した避難経路を導き出す手法の改良や、災害時に使用可能なアプリの開発などが期待される。