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2024.03.22
レポート | 体験レポート
【TECHNO PIZZA x 3L night】先端技術で感じる、人間とAIの共生
株式会社 リコー, Konel inc.
最先端技術を体験し、R&Dプロトタイプの可能性を探る事を目的としたテクノロジー体験イベント「TECHNO PIZZA」の第2回目となる『TECHNO PIZZA x 3L night』が、越境型クリエイティブ集団「Konel」と株式会社リコー(以下、リコー)のタッグで、2024年1月26日、リコーの実験的ワークプレイス「RICOH 3L」で開催されました。AIや感情解析などを用いたプロトタイプの観賞・体験を通して、新しい技術の発見や、R&D担当者との交流の場として多くの参加者が集まりました。
本記事では、「TECHNO PIZZA x 3L night」で展示されたプロトタイプの体験レポートをお送りします。
(レポート後編はこちら:【TECHNO PIZZA x 3L night】トークセッションレポート)
声色から読み取った感情で育てる、デジタル観情植物『Log Flower』
開発/出展:Konel
「Log Flower(ログフラワー)」は、部屋の雰囲気(感情)を栄養にして育つデジタル観情植物。音声感情解析AI「Empath」を使用し、置かれた空間の人々の4つの感情(喜・怒・哀・平常)を取得し、吸収する感情によって、デジタル植物の花の形や色などの生育の仕方が変わりながら成長します。
イベントでは来場者の首にかけた端末センサーからリアルタイムで位置と音声を解析し、会場で人々の集まった位置とその時の感情をモニターに映し出して可視化していました。会場の見取図上に来場者の動線と、その時の感情を表す光の軌跡が映し出され、その横で「Log Flower」は来場者の音声から解析した感情によって姿を変えながら成長しました。議論が白熱しているエリアではセンサーが敏感に反応していたのか、光の軌跡が集積となって集まっていきます。
来場者の首にかけた端末センサーからは、来場者の位置や音声を解析
書いたイラストから精巧なイラストを生成するイラストツール『神絵師』
開発/出展:Konel
『神絵師』prototyped by Ayumi Nagai(Konel)
『神絵師』prototyped by Ayumi Nagai(Konel)
「神絵師」は、描いたイラストをカメラやiPadで取り込むと、リアルタイムで精巧なイラストに清書変換してくれるAIイラストレーションツール。人やモチーフなどの具体的なイラストだけでなく、子供のイラストや抽象画さえも色鮮やかな巧緻なイラストにリアルタイム変換されていきます。
撮った映像を任意のテイストにリアルタイム変換していく『リアルタイムアニメ』
開発/出展:Konel
リアルタイムで映像が変換していく様子。『リアルタイムアニメ』prototyped by Ayumi Nagai(Konel)
『リアルタイムアニメ』prototyped by Ayumi Nagai(Konel)
「リアルタイムアニメ」は、撮影した映像を取り込むと、動画生成AIを用いて任意のテイストの動画にリアルタイムにAI変換していくツール。取り込む映像が変化すると、それに応じてAI生成動画も描画内容がリアルタイムにくるくる目まぐるしく変化します。
変換し出力される動画のテイストは、プリセット設定の「サイバーパンク」「アニメ」「浮世絵」「ゴッホ」「ポートレイト」のほか、ユーザーが任意のテイストをプロンプトで入力し指定することができます。「ポケモン」「ドラえもん」「ドラゴンボール」のようなキャラクターにも指定し変換できました。
知財からはじめる未来妄想をサポートするプラットフォーム『Ideaflow(アイデアフロー)』
開発/出展:知財図鑑
生成AIの活用によって休眠特許や知財文献を非研究者にもわかりやすく翻訳し、ビジネスアイデアを生成・共有・ブラッシュアップするプラットフォーム。特許番号を打ち込むと、AIが特許内容の要約と、その特許を活用したビジネスアイデアをイラスト付きで生成します。当日は実際に生成されたアイデア集を公開しました。
(※画像は開発中のものです)
分身を通じて、自分を感覚的に知る『About Me』
開発/出展:リコー
キャラクター性のあるデバイスを自分の分身として持ち歩き、デバイスへの触れ方や喋った音声の感情分析などを通して、自分を客観的に見ることができます。
分析結果は、自分の写真に重ねて、色の割合や歪み具合で感覚的にビジュアル化されます。
リコーのデザイナー主導で開発を進めており、「じぶんってなんだろう」というコンセプトで始まった実験的な取り組みの展示となっています。
視覚と嗅覚からクリエイティビティを引き出すコミュニケーションバディ『Future Teams』
開発/出展:リコー
人以外の存在と包括的に働くためのコミュニケーション手段の探索として生まれたプロトタイピング。オーストリア・リンツで毎年開催されるアート・テクノロジー・ソサエティがテーマのフェスティバル「Ars Electronica Festival(アルスエレクトロニカ・フェスティバル)」がきっかけではじまったこのプロジェクトは、AIのフィジカルな存在を予感させるデザインのコミュニケーションAIバディが、チームの会話による新たなインスピレーション画像の提案や、チームの感情に応じてカスタマイズされたリラックス効果のある香りの調合などにより、視覚と嗅覚を通じてクリエイティビティを引き出してくれます。
専用サイト:https://ars.electronica.art/who-owns-the-truth/en/future-teams/
“空気感”を空間に溶け込ませる映像にする『Share of Ambient - Fire place』
開発/出展:リコー
雰囲気を可視化するシステム。周辺環境音の情報を色と形でヴィジュアライズし、「共感覚一致」を促します。キャンプファイヤーのような光が揺らぐ空間でくつろぎながら,音と光に反応するパーティクル(粒子)が微量に変化する様子を観ることが出来ます。静かな時は粛々と、話が弾んでいる時は躍動的に、空間の雰囲気や人々の関係性に溶け込むようにグラフィックが流れていきます。
専用サイト:https://shareofambient.studio.site/
おわりに
今回展示されたプロダクトの共通点をざっくり抜き出すと、「AI」や「コミュニケーション」になるでしょうか。生成AIの発展により、生産性や効率性といった資本主義的に正義とされてきた能力が人間からマシンに移り変わりつつあり、AIアルゴリズムを使用したレコメンドによる興味の細分化などにより、コミュニケーションの在り方も大きく変わってきています。そんな時代の荒波の中でも新しい働き方や技術の在り方を模索し、人間とAIの共生や、新時代のコミュニケーションという分野に正面から向き合うプロダクトが多く見受けられた印象でした。引き続き知財図鑑では、先端テクノロジー体験イベント「TECHNO PIZZA」の情報をキャッチアップしていきます。
▼レポート後編はこちら:【TECHNO PIZZA x 3L night】トークセッションレポート
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■イベント:TECHNO PIZZA x 3L night
開催日時:2024年1月26日(金)
開催場所:「RICOH 3L」(東京都大田区北馬込1-26-19)
主催:Konel、リコー
展示内容:Log Flower、FUCHAT、IDEA FLOW、Future Teams、Share of Ambientほか
関連記事:AIや感情解析など、先端テクノロジー体験イベント「TECHNO PIZZA x 3L night」を、Konelとリコーが共催
Text:小澤 知夏、石川 樹/Edit:福島 由香